ペルチェ素子冷却霧箱の作製 その2

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ペルチェ素子を駆動してみたいと思います。
これまでもちょっと電流流してみて触ったことはありましたが、ちゃんと温度を測定したことはありません。どんなものか実際に触ってみたいと思います。

前回までの進捗は、温度計を動かしただけでしたので、簡易的に補正をして測定できるようにする所からです。
こちらが前回作ったもの。温度計であるMCP9701Eがどこにあるかわかりませんね。

外します。MPC9701は-20℃程度しか測定できないのですが、まだそんな低温に到達できるとは思っておりませんのでとりあえずこのまま使います。

リード線をハンダ付けして引き回せるようにします。

反対側はスズメッキ線をハンダ付けしてブレッドボードに挿せるようにします。

配線して温度を表示させます。
温度計を持ってきてほぼこの温度を示すように校正をします。校正はオフセット電圧である400mVを変更することで行います。一点校正ですがまあいいでしょう。
また、全開までのスケッチでは1秒に一回の表示更新を行っていましたが、結構ばらつきが大きいので、150msec毎に10回測定してその平均値を表示させるようにしました。

校正後の様子を動画で。二つの素子の出力が同程度になり、平均値を取ることでそれなりに安定した表示をしています。

ではいよいよペルチェ素子を動かします。
高温側に取り付ける放熱板を探しましょう。ヒートシンク入れを漁って適当なやつを見つけます。

これにします。
すっかり忘れていたのですが、いずれペルチェ素子で遊ぶときのためにハードオフで買っていたCPUクーラーです。

ヒートパイプ方式で12V駆動のファンもついております。
ヒートパイプということで、ひっくり返した状態できちんと動くかどうか検証が必要ですが、実験台としては使えるでしょう。

まずはどうなっても良い小型の素子を動かしてみます。定格も何もわかりませんが、3~4Aくらい流したところでどうということはないでしょう。
CPUを貼り付ける場所にペルチェ素子のホット側を密着させます。セロテープを思いっきり引っ張って貼り付けました。その上に温度計1を、ホット側と接する銅版に温度計2を固定しました。温度計2は瞬間接着剤で貼り付けています。

これでセットアップ完了です。

とりあえず通電してみます。1.2Vかけた時点で2A近く流れます。
この電源はMAX3Aですので、まずはこの辺で様子を見ます。

ををを…みるみる下がっていきます。

ほぼこの辺で安定しました。いきなり氷点下です。結構下がるもんなんですね。表裏の温度差は27℃程度。ホット側は何ぼも上昇していません。ファンを回さずともこの値で安定でした。ヒートシンクの熱容量でもって行っている感じです。

測定値は温度計の誤差の可能性もありますが、このとおり素子のエッジ部分に霜がついております。
精度は別としても氷点下まで下がっていることは間違いないようです。クリックして大きな写真で見ると良くわかります。

もういっちょ、横から。結構な量の霜です。

このあと3Aまで電流を増やして見ましたが、温度はほとんど変わりませんでした。

「これはもっと電流を流したらさらに低温側へ行くに違いない」と思い、ジャンク電源を引っ張り出しました。カホパーツで購入したジャンク電源 5V10Aであります。
2Vで3Aくらい流れていますので、5V10Aというのはいい値だと思われます。

繋ぎます。

 
 さてどこまで下がるか….と思ったらまったく下がりません。というか低温側も環境温度より高くなっております。このときほぼ9A流れていました。発熱のほうが勝ってしまっているようです。やはりデバイスには最適電流値があるのですね。

動かす前は「電流流しただけ下がるんじゃね」と思っていましたが、どうもそうではないようです。ということでこれ以上定格がわからないデバイスでやっても混乱しそうなので、本命を登場させることにします。秋月の12708 (最大電流 9A、最大温度差70℃)です。

同じように固定して通電します。電源を別の物に変え、最大で4Aまで流せるようにしました。最大定格からはまだまだ少ないですが、まずは予備実験ということで。

 いきなり記録更新です。-7℃まで下がりました。表裏の温度差は30℃といったところ。いい感じであります。

電流は電源の能力一杯まで流しています。

その後ホット側の温度が上昇して行き、このあたりで安定しました。コールド側は少し上がっていますが、ホット側はそれ以上に上昇しており、表裏の温度差は37℃あります。室温は19℃でしたので、ホット側は室温+10℃といまいち放熱できていない感じです。
これはやはりヒートパイプを上下逆転させているからではないかなあという気がします。

ということで、上下をひっくり返して実験してみました。

電流はほぼ4A一杯流します。

下がっていきます。

さらに下がります。

記録更新。

最終的に-9.5℃付近まで下がり、その後-8.5~-9℃付近で安定しました。
注目すべきはホット側の温度です。ヒートパイプを上下逆に置いたときに比べて5℃くらい低くなっています。表裏の温度差は35℃程度と先ほどの37℃とあまり変わりませんので、ホット側が低い分コールド側も下がっているものと思われます。やはりヒートパイプの設置方向は異方性があるようです。
横向きがもっとも重力の影響を受けにくいという話もありますので、いずれこの方向性については検証したいと思います。現状ではホット側が室温+10℃程度、絶対温度でも30℃ちょっとということで、CPUクーラーの設計仕様とはかなり違うと思われます。もう少しホット側が高くなるような条件になったときにいろいろな設置角度で比較をして見たいと思います。

結構面白いですペルチェ素子。教科書レベルでは知っているものの、実際にデバイスを触ると面白いですね。到達低温記録に挑戦したくなります。
カホパーツで買ったペルチェ素子は定格6Aです。これを二枚並べて秋月ペルチェのホット側を冷やしてやろうというのが考えている作戦です。定格通り動けば-100℃なんて値になるのですが、まずそれは無理でしょう。-40℃あたりを目標にしましょうかね。
霧箱そっちのけで低温大会をやってしまいそうです。いずれにしろ面白くなりそうです。

補正を加えて、平均値表示をするように変更したスケッチはこちら。

#include <LiquidCrystal.h>

// initialize
LiquidCrystal lcd(2, 3, 4, 5, 6, 7);

// declareation
float temp01;
float temp02;

void setup()
{
  // define LCD size
  lcd.begin(16, 2);
  // show message
  lcd.print(“mirata.na.hibi”);
  // move cursor
  lcd.setCursor(4, 1);
  // show second row
  lcd.print(“Temp control”);
 
  delay(3000);
  lcd.clear();

}

void loop() {

  // measure temp & display LCD
 
  //100msec毎に10回測定
  for(int i=0; i<=9; i++){
    temp01=temp01+analogRead(0);
    temp02=temp02+analogRead(1);
    delay(100);
  }
  temp01=(4.9*temp01/10-415)/19.5; //温度計1の補正値+15mV&平均値計算
  temp02=(4.9*temp02/10-460)/19.5; //温度計2の補正値+60mV&平均値計算
  lcd.clear();
  lcd.print(“01:  “);
  lcd.print(temp01);
  lcd.print(” deg”);
  lcd.setCursor(0, 1);
  lcd.print(“02:  “);
  lcd.print(temp02);
  lcd.print(” deg”);

}

コメント

  1. 匿名 より:

    お~電子冷蔵庫。ですか~!

    • みら太/mirata より:

      ペルチェ素子は初めてちゃんと触りましたが面白いですねこれ。
      効率的には褒められたもんじゃありませんが、一言「不思議」なデバイスです。
      低温記録狙いに嵌って本道を踏み外さないように気をつけます(笑

      ありがとうございました

  2. 匿名 より:

    霧箱は私も、そのうち作ってみたいと思っています。
    何度まで温度を下げれば良いのかよくわからないですが、
    仮に-40℃を目指すとすればペルチェ素子の最大温度差が66℃ぐらいらしいので、ホット側を少なくとも20℃にする必要があるのでは無いかと考えています。ので水冷CPUクーラーで放熱側を氷で冷やすか、2段にするかしかないかなーと思っていますがなかなか、実行に移せません。
    ぜひ、人柱になってください。
    (スパッターの記事とても参考になりました)

    • みら太/mirata より:

      匿名さんありがとうございます。
      電機を流して温度が下がるというのはなんとも魅力的です。ついつい嵌ってしまいそうです。ご指摘のような方法は低温を得るためには必須の方法だと思います。
      一方で、霧箱の本質は低温というよりも温度差のようです。過飽和状態になっている領域を大きく取ることでより良く軌跡を観測できると思います。過飽和状態の領域を大きく確保するには霧箱内の蒸気圧差を大きくするのがポイントです。
      まだ構想段階ですが、おおきな温度勾配(蒸気圧勾配)を作るために上部を加熱することも考えています。
      がんばって人柱になります(笑

    • 匿名 より:

      私も最初は感動しました。でも消費電力がすごいですよね。1個で50Wくらい?結構電力を投入するので2段にするには、この熱も冷やさなければならないので1つを9個で冷やすとかしなければならないと思います。
      それて、冷却の構成が決まったら次は、結露対策が必要になってくると思います(水を介してホット側と冷却側の間で熱がながれる)、このとき、2液混合型の発砲ウレタンが有効だとおもいます。
      ・・・・と無責任にもけしかけてみる(ごめんね無責任で)

    • 匿名 より:

      書き忘れました、私は、水冷の方が現実的だと思います。
      過飽和状態ということは、滞留しないようにできれば窓側を少し保温もありなのかな?

    • みら太/mirata より:

      ありがとうございます。
      仰るとおりです。最初は感動するんですが、すぐに「この熱どうするんだよ」になります(笑 効率悪すぎです。何とか水冷でいければと思っております。

      過飽和の本質は温度勾配ですので、上部を暖めるというのはありのはずです。あとは媒質の沸点凝固点の差も聞いてくると思っています。蒸気圧曲線を考えると、沸点と凝固点の差があまり大きくなく、かつペルチェ素子で冷やせる温度程度では凍らないという特性が必要なんじゃないですかね。…たぶん