スパッタチャンバ改造 まだまだ続く

その他のプロジェクト

 
だんだん泥沼にはまっているような気がしてきました。レーザからも離れていっているし。
せっかくの三連休の二日をほぼ朝から夜中まで実験し続けています。
好き勝手にやれるところが趣味の良いところですが ^^;

作業台の上はこんな感じで大変なことになっております。

一連の実験を通じてかなりのことがわかってきました。現在はこれまでのただのスパッタからマグネトロンスパッタに変更した上で製膜時間と膜質の均質性のバランスをとっているところです。これがなかなか難しい。
マグネトロンスパッタについてはここでいったん結論を出してあきらめていたのですが、その後アイデアが出てきたので改めて検討しています。今度のマグネトロンは実に良い感じです。

こんな感じ。

電子レンジを分解して(電子レンジの)マグネトロン管から取り出した磁石と、昔買ったネオジム磁石を組み合わせています。
以前の構造は作ってみたものの思惑通りにならず、結局なんちゃってマグネトロンというかリニアマグネトロン(?)になってしまっておりました。
今回の構成は、シリコンゴムのスペーサーを入れてネオジム磁石をフェライト磁石の中央に固定し、全体をビンの蓋に入れています。スペーサーの部分に強力な磁界のギャップが出来ますのでこの部分で電子をトラップします。

効果は劇的でした。
ターゲットの表面にくっきりとドーナツ型のプラズマが出来ています。成功です。

ドーナツ型のプラズマ部分には電子がトラップされてぐるぐると回っております。電子の密度が高いため、この部分のプラズマ密度も上昇します。そのプラズマの発光が上の写真の輪っかです。
高いプラズマ密度は高いスパッタ効率となり、同一条件であればただのDC二極スパッタに比べて製膜速度が上昇します。これがマグネトロンスパッタの特徴です。

製膜後のターゲット表面はこのようになります。マグネトロンの跡がはっきりと残っております。

目下の悩みはムラの問題です。
マグネトロンの利用によって製膜速度は確かに上がります。膜厚計がありませんので製膜レートを正確に測定しているわけではありませんが、マグネトロンなしの状態でおおよそ15-20分くらいで出来る膜が2分くらい、というイメージです。10倍近い製膜速度の向上といってよいかと。
その代わりに膜のムラが気になります。マグネトロン化によってスパッタされる場所がターゲットの一部に限定されますので、より点光源(点クラスター源?)に近くなり、基板とプラズマの位置関係によって膜にムラが出来るのです。
マグネットをターゲットから離してプラズマの集中を弱めるか、基板をターゲットから離して点光源の影響を小さくするか、どちらかの方法をとれば膜の均一性は向上します。しかしながら、製膜速度は低下していきます。このバランスが難しいのです。
時間をかければ良いだけともいえますが、時間をかけるとターゲットと基板の温度上昇が激しくなり、酸化のリスクが高まります。単純に時間を長くしていくとそれはそれで別の問題が生じるのです。このあたりが本格的な真空系やアルゴンガスを使えない私の環境の限界です。

検討した結果(の一部)がこれ。

左上の基板はきれいな銅の色が出ていますが、まだハーフミラーです。それ以外の基板はいろいろとだめです。ちなみに左上のやつは接写するとこんな感じ。(左上にある丸い跡は水を落としてしまって出来たものです)きれいな膜になっています。

この膜質と均一性で厚膜を短時間に形成するのが目下の目標となっております。
レーザはどこにいったんだろう……

コメント

  1. なはなは より:

    昨年、偶々拝見させて頂き
    興味深く読ませて頂いております。

    磁石はターゲットの下で比較的自由に動かせる構造かと認識しておりますが

    この磁石を動かしながらのスパッタでは
    ムラは解消できないでしょうか??

    実際の装置では、ターゲットの寿命を延ばす為にそんな機構がついているものもあるかと思います。
    (プラズマ密度の濃い部分だけが削れるので
     磁石を動かすことで解消してるようです)

    上記のような目的ではありませんが
    磁石を動かすことで満遍なくターゲットをスパッタする形で、現状より改善できそうな気がします。

    轆轤のような台に中心をずらして、磁石を配置して、台を回転させることでこのような状態を作ったり出来ます。(左右に動く気候でもOKな気もします)

    • みら太/mirata より:

      なはなはさん、アドバイスいただきありがとうございます。まったくその通りと思います。来週やってみようと思います。
      磁石はチャンバの外においていますので動かすのは簡単です。プラズマ位置を見ながら動かすためにターゲットが下に来るようにしたほうが良いですね。最初は手で動かすかな…うまくいくようならステッピングモータで往復運動するようにメカを作っても良いですね。
      ちょっと行き詰まり気味でしたが、なはなはさんのコメントで展望が開けたような気がします。
      がんばってみます。もちろん結果はここで報告させていただきます。
      またアドバイスくださいませ。
      ありがとうございました。