CO2レーザ自作情報

 
CO2レーザについていろいろと情報を集めて勉強をしているところです。
詳細は都度書くとして、CO2レーザを作るのはそれほど簡単でもなさそうです。もう少し言うと、ほかの種類のレーザ(He-NeやHeCdなんか)を自作することに比べると非常に簡単なのですが、個人が趣味で作るにはなお敷居が高いというのが正確かな。
日本国内には趣味でCO2レーザを管から自作したという人のページはまだ見つけきれておりません。が、海外にはさすがにぶっ飛んだ人たちが多く、kWクラスのCO2レーザがガレージにあるという人もおります。戦争でもする気かよ。

ということで、自作レーザのおそらく総本山 Sam’s LASER FAQ を中心に勉強をしております。
ぶっちゃけいえば、私が作ろうとしているようなCO2レーザについてはすでに詳しい作り方が公開されており、それにしたがって作っていけば動くものができるはずです。
 たとえば”design and performance of a Sealed CO2 LASER
しかしながら、個人作成の場合にはいろいろと制限も多く、お手本どおりの部品が手に入らないことも珍しくはないでしょう。それを何とか工夫して乗り切っている人々の苦労が集積されているのが上記FAQサイトです。
 Home-Built Carbon Dioxide Laser (なんちゅうタイトルやねん)
の下のほうには、いろいろなガレージワーカーのケーススタディがたくさん掲載されており、いずれも非常に参考になります。

情報収集によってわかってきたことは以下のようなものです。

  • 個人作成するならばシール(ガス封じ込め)タイプよりもフロータイプのほうが作りやすい。
  • ガスはCO2とN2のほかにHeを入れるとよい
  • Heはプラズマの冷却に寄与
  • 放電によってCO2が分解し、COになるため(COは阻害物質)効率が低下する
  • レーザ管の径が太いほど出力を上げやすい(プラズマの体積がでかい)
  • ガス圧が高いほど出力が上げやすい(プラズマ密度が高い)
  • が、放電電圧が上がり安定した放電が難しくなる
  • 電源は15kV、数十mAといったところは必要
  • レーザ出力は放電電流にほぼ比例
  • 電源としてはネオントランス(~15kV)+高耐圧ダイオードによる整流がもっとも簡単
  • その場合はスライダックで電流制御
  • フライバックトランスでは出力不足(10Wなんて出ない)
  • 変換効率は5-20%(個人作成では10%くらいがいいとこ)
  • たとえば15kV 20mA → 300W入力で、出力が30W程度までが期待できる
  • 30Wあったら10mmくらいのアクリルもぶった切れる。金属はマーキング程度。
  • レーザ管の形状によって出力側のハーフミラー(O.C.)の反射率と反対側の全反射ミラーの曲率が変わる(計算式あり)
  • レーザ管の径と長さ(プラズマ長さ)がある程度以上(径の500倍以上)の比率になるとミラーなしでも十分なゲインが稼げる
  • ミラー材質は(個人で安く何とかなる材料として)銅、または銀が10umをよく反射するのでよい
まだまだありますが、ひとまずこんなところで。
ということで、当初考えていた計画との乖離が大きなところは電源です。わたしはフライバックトランスを使おうとしていたのですが、一般的なフライバックトランスの出力は壊れる直前までがんばっても10mAくらい、連続定格は1-5mAがいいところのようです。もともと電流を流すためのものではありませんしね。
それでも電圧は最大30kVくらいありますので、簡単には150Wくらいの入力が期待できるということです。もちろんプラズマの入力インピーダンスを考えると電圧はかなり下がると思います。正確な入力の測定はいずれ考えるとして、ここでは簡単に150Wと考えます。これに効率をかけるといいところ10W付近が上限出力になりそうです。むむむ…という値です。
レーザの出力が低ければその分時間をかけて加工をすればよいようにも思えますが、レーザ加工の場合は目標部位をアブレーションする必要がありますので出力x時間で簡単に考えることはできないようです。低い出力でゆっくり加工するとアクリルや木ならばおそらく燃えます。
ところが、さらに調べていくと、フライバックトランスの並列接続というのが見つかりました。
HV-Wiki(こんなものがあるというのが…)の
の項目に、フライバックトランスの直列、並列、直並列接続に関しての情報があり、同一パルスソースで駆動すれば並列接続しても問題ないと記載されています。
なるほど。確かにフライバックトランスはダイオードで逆流防止されますので並列につないでもよさそうな気がします。異なるフライバックトランスを組み合わせるとおそらく電圧が一定ではないので怖いところもありますが。
これがうまくいけば私の計画でもそれなりの出力のレーザができる可能性があります。
ということでフライバックトランスをいくつか手に入れる必要があるようです。
次の課題はミラーです。
10umというCO2レーザの出力波長で見るとガラスは真っ黒です。つまりCO2レーザの反射鏡には私たちが日ごろ使っている鏡(ガラスの奥に銀の反射面がある)は使うことができません。反射面は表面側にある必要があります。
当然そんな鏡は普通にはありません。しかも材料は銅か銀がよいと。
銅版を磨いて鏡にすることもできます。しかしそれでは完全反射面を作ることはできても出力側のハーフミラーをつくることはできません。ハーフミラーを作るには銅のきわめて薄い膜を作らねばいけません。さらにハーフミラーを介して出力光を取り出すためにはハーフミラーの土台となる基板は10umの波長に対して透明な材質でなければなりません。(これについてはこのあと書きます。)
ということで、ハーフミラーを作るためには薄膜作成装置も作る必要があるようです。簡単には真空蒸着かスパッタリングですか。銀インク、銅インクなんてものもありますが、おそらくハーフミラーの反射率を細かく制御することができないでしょう。
作るのが簡単なのはスパッタだと思います。じつはそのための材料もすでに準備しつつあります。
最後まで残るのが出力窓材とレンズでしょう。
いずれも10umの遠赤外光に対して透明な材料である必要があります。Home-Built Carbon Dioxide Laser にも多く言及されていますが、窓材として素人に手に入りそうなものはNaCl(食塩)くらいです。がんばってKClですか。いずれも潮解性があって扱いにくいものです。
窓材の理想はZnSe、次点でGeです。ZnSeの結晶やそれを加工したレンズはAliExpressに売っており、比較的簡単に手に入るのですが、Seには毒性がありますので二の足を踏んでおります。じゃあGeということになりますが、そんなもの簡単に手に入んないでしょう。あったとしても高いはず。….と半ばあきらめておりましたが、なんと比較的安くありました。それはこちらです。
いわゆる怪しい系の健康用品として売られておりますが、企業は理化学材料を扱うしっかりとしたところのようです。希土類酸化物なんてのも扱ってたりします。
まだ手配はしていないのですが、スパッタ装置がうまく作れたら買ってみようかと考えております。
今のところの情報をひとまずまとめます。
材料入手だけでもこの大変さなので、おそらく手を出す方はいらっしゃらないと思いますが。
もし自作なさる方は十分な注意を持って自己責任で実施ください。私の情報をご覧になった結果何らかの事故が発生しても私は何の責任を取ることもできませんことを明記させていただきます。

コメント

  1. 匿名 より:

    自作で炭酸ガスレーザー作るなんて、尊敬します。