閑話休題的なネタを一つ。100均のつっぱり棒のハッキングというか改造です。
横浜基地での単身赴任生活も1年半を過ぎました。基地内部はあんまり所帯じみた感じにならないように気をつけているのですが、それでも少しづつものが増えていきます。
特に台所。鍋の大きなものを買ってしまったり、食材やお菓子のストックが増えたりといったことです。
台所には天井から床までのつっぱり柱を立てて、そこにネットを固定して、さらにそのネットに棚やらフックやらをかけて細々したものを収納しています。
おおむねそれで落ち着いてはいるのですが、前々から冷蔵庫とオーブントースターの上の空間が無駄に思えていました。ということで、今回そこに突っ張り棒を使った棚を取り付けしようと思い立ったのです。この部分。
購入したのはこちら。DAISOのつっぱり棒です。いくつか種類があるのですが、私が購入したのは65cmのものを二本です。
65cmから100cmまで伸ばせるようになっているとのこと。
耐荷重は2kgと頼もしいです。
通常であればこれを取り付けて棚板渡して「はい完成!」となる予定でした。
ところが、これが思惑通りにいかなかったことから面倒な作業となりました。
こちらが突っ張り棒本体。
この時点では構造は不明で、よくある「回して長さを調整する」「伸ばした状態で押し込むと多少縮むので、その力で突っ張って固定する」という機能がわかっていただけでした。
ほんの10mm程度ですが長すぎました。
悔しいですね。適当に測って買ったのが悔やまれますが、どうしようもありません。
「突っ張り棒」ですから、自身より短いところでは突っ張りようがありません。伸ばしてなんぼの製品です。
改めて測定するとこれ。
ということで、200円だししゃーないなとあきらめかけたのですが、どうしても惜しくてたまりません。たかが200円、されど200円なのです。
ということで、何とか改造して使うべく分解して構造検討に入りました。
まず、太い方のパイプのお尻のブッシュを外してみます。覗き込むとなにやらバネっぽいものが見えますが、どういう構造なのかよくわかりません。
まあ、長すぎるんだから切ったら何とからるでしょ、と思いおしりから100mm程度のところを金のこで切断してみました。肉は薄いので切断そのものは簡単です。
すると、なにやらばねが出てきます。いやばね自身は別に不思議ではありません。機能上どこかにバネがあるはずなのです。ですが、このバネ、お尻の部分、つまり下の写真の切断された右側のパイプのさらに端の部分で固定されています。右側の切断されたパーツをもって回すとバネもついてきてくるくる回ります。ふむ。
で、さらに調べるためにこのバネを引っ張り出してしまいます。
すると内側のパイプがついてきます。バネは内側のパイプの中にさらに入り込んでいってます。この時点でもまだどうやってパイプが伸縮するのかと、どうやってバネが突っ張っているのかがわかりません。
なんか、引っ張り出すとすごい長いバネが入っています。棒が突っ張るときの縮み幅なんてせいぜい数mmですから、こんな長いバネは必要ないように思われます。
ま、詳しい構造は分りませんが、とにかく長いんだから切れば何とかなるだろうという荒っぽい考え方で、とりあえずお尻のバネ部分を切り離して、バネをペンチで切りました。
バネを切った状態で内側のパイプを引っ張り出します。
この状態でバネを回していて「なるほど」と、動作原理というか構造というか、すべてが理解できました。
突っ張り棒は実に賢い作りになっています。下の写真で内側のパイプの端の部分、塗装がない部分にピンが見えるかと思います。このピンがすべての動作のポイントになっています。
感心したのでfusion360で図に起こしました(笑 内側のパイプと、内側のパイプの中に入り込んだバネと、この縮尺ではよくわかりませんが、ポイントとなるピンを描いています。
ピンはこのように内側のパイプの側面にカシメられており、バネのらせんの中に引っかかっています。
この状態でパイプを回転させると、バネも一緒に回転しますが、バネを固定していると、ピンがバネのらせんに従って上下(下の図では左右)に動きます。こうやって長さを調整しているということです。
で、適当な位置で回転を止め、内側のパイプを外側のパイプに対して縮めると、ピンは回転しないまま(下の図では手前の方へ)押し込められますが、バネに引っかかっているためにバネを押し縮めようとします。これが縮に対する反発力となるのです。実に賢いですね。
調整幅(今回買った突っ張り棒では65-100cm)を大きくとると、その分バネの長さは必要になりますが、必要なものはそれだけです。実にシンプルで安い方法です。知恵を絞ってできる限り簡素な形でこれだけの機能を実現しているということは素晴らしいと思います。もちろん、シンプルといいつつもこれだけのパーツと構造を100円で販売できているというのは脅威であります。
ということで、構造と動作原理さえわかってしまえば改造の方針は自ずと決定します。
が、一本目では残念ながら切断位置を間違えました。突っ張り棒の機能を実現するためにはバネの一端が外側のパイプに固定されている必要がありますが。その部分をぶった切ってしまいました。
ので、そこも併せて改造します。バネの端部を曲げこんで、外側のパイプの出口に食いつかせるように曲げてその部分をゴムブッシュで押さえてしまいます。
端っこをゴムで押さえているだけですので、内側のパイプを強く回すとバネごと回ってしまいますが、そっと回せばまず問題はありません。
ということで一本目の外側パイプは短くなりました。改造前のものと比べます。わかりますかね。
内側のパイプのピンがない側は突っ張りの機能には何ら寄与していませんので、切り放題です(笑 好きな位置で切ります。
これで改造終了です。改造前から10cmくらい短くしました。外側パイプの端部にあるバネの固定位置と、内側パイプのピンの位置があまりに近いとバネの縮む部分の長さが短くなりすぎますので縮めるのに力が必要になります。一方であまりに引き出しを長くすると棒全体の剛性が下がります。ということで、50~100mmくらい引き出したところで突っ張らせることを目安に切断を行いました。
ここまで短くなっています。
10cmくらい引き出して突っ張らせます。じつにいい具合です。
素晴らしい。
二本目の改造に移ります。
ここまででわかった通り、突っ張り棒の機能は引き出し側から見た反対側に集約されています。外側のパイプはバネの一端を固定するという機能、内側のパイプはピンでバネに引っかかる機能です。
ので、引き出し側は切断しても何の問題もありません。機能を保ったまま突っ張り棒を短くできます。ということで、引き出し側を内外両パイプを切断します。
あっさり終わります。パイプの肉が薄いので金のこで数回引いてやれば肉は破れます。
何か所か切って曲げてやればぽっきり折れます。簡単。
あっさり完成。いい具合の長さに調整できました。
二本突っ張らせてみます。ビクともしません。鍋乗せても大丈夫そう。
今回はMDFの板を渡して比較的軽いラップの買い置きやお菓子を置くことにしました。
しばらく様子を見て、行けそうであれば本格運用に移る予定です。
ということで、200円の突っ張り棒ではありますが、分解して考察すると思いのほか素晴らしいアイデアでできていることがわかりました。
私が正面から突っ張り棒を考えると、もっともっと面倒な構造になることは間違いありません。今回分かったシンプルな構造には感動を覚えました。良い経験になったと思います。
皆様の改造のヒントになりましたら幸いです。
コメント
自分も最近、突っ張り棒買ったのすがこの構造は面白いですね。
とても、参考になりました。この長いバネは何かに応用できそうかなーと。100円ショップ恐るべしですね。
junkhackさん、そうなんですよ、このバネ何とか活用したいところです。ちょいと硬すぎ感がありますが。
100円ショップはほんとにすごいところです。私はメーカーで商品企画的なことをすることがあるのですが、我々の会社だったら袋だけで100円超えそうな気がします(笑
「みら太な日々」様の神通力で私のブログ、1週間で1000突破しました。前借りの経験ポイントとしてこれをバネに精進してまいります。この場を借りてお礼を。ありがとうございます。
さて、これはまた大変参考になりました。Fusion見てよく理解できました。こうゆう機構構造例が沢山頭に入っていると何かを作る時にいいんですよね。果たして自力でFusionでこれ描けるだろうか?と考えたりします。数年前SketchUpを少しいじっていましたが、バネ系はPlugIn入れないと難しかった記憶が、Fusionはわりと簡単な様な気がします(まだ描いたことないですが)SketchUpとFusion360で使い分けなどされていますでしょうか?
マーティさんどうもです。一週間で1000はすごいですね。
月間4000PVと考えるとすでにブログの上位10%くらいに入っていると思いますよ。
コメントもついて議論も行われているようです。素晴らしい。
皆さんから反応をいただくとやる気が出ますよね。
どうぞ無理せず頑張ってください。
fusionはずばり「バネ」というコマンドがありますから楽勝なんてもんじゃないですね。恐るべしです。
私はプライベートではほぼ100% fusionへの引っ越しが終わりました。使い始めてから1年。ようやく作りたいものをそれなりの速度で描けるようになってきたように思います。が、図学の基本が出来てないために、やり方によってはお作法が違っている感が満載のこともあります。
まだまだ修行であります。
こんばんは
薄肉パイプの切断はクルクル回して切断する
パイプカッターがおすすめですよ。
切断面もキレイですし、何より切り粉がでないのが
いいです。
こばたいしょうさん毎度どうもです。
で す よ ね ~
全く頭に浮かびませんでした。パイプカッターは工具箱の中に放り込まれております。今後は100%パイプカッター利用とさせていただきます。
大きな気付きを与えていただきました。誠にありがとうございました。