ガス冷却ペルチェ方式霧箱 その13 冷却サイクルユニットの分離

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ガス枕もできましたので、中途半端に作業して止まっていた除湿器の分解を続けます。
現状こんな感じ。この状態で各部の機能と動作の検証を行ない、ほぼ何がどう動いているかを理解しています。

そもそも除湿器に使われている冷凍サイクルなんて単純なものです。コンプレッサとオリフィスがあって圧力差を作れれば動くわけです。
霧箱に必要なのはこの冷凍サイクル部分だけですので、現状の除湿器からコンプレッサ、ラジエータ、エバポレータの三つとそれをつなぐ配管だけを取り出します。原理的に冷凍サイクル部分だけで独立して動作するので、そこだけ分離取り出しできるはずです。

では分解を続けます。まずは制御系を切り離します。

これでもう後戻りできません。除湿器として動かすことは不可能になりました。

こちらが三つの重要部材の中でも最も大切なコンプレッサ。フロン134aを圧縮する部分です。除湿器は東芝製ですが、コンプレッサは松下製です。
コンプレッサは冷蔵庫なんかと同じように、モータ自体が密封されたケーシングの中に入っています。騒音対策、回転部分の気密確保の観点からこうしたほうが良いと判断されたものと思います。当然分解修理なんてできません。壊れたら廃棄する覚悟の設計です。
フロンガスにはオイルが混合されており、ガスと一緒に配管経路内を循環しています。これで潤滑を確保しているということです。

除湿器には除湿した空気を室内に循環させるために大型のファンがついています。
この除湿器にも径が250mm近いシロッコファンが装備されています。
これを外して、

手で回してみると実にスムースに回ります。
構想ではこの部分は捨てて、ラジエータを冷やすために複数の軸流ファンを使うつもりでいました。が、このファンがあまりに気持ちよく回るので、何とか使いたくなりました。
ということで、あとで動作解析することにします。

ファンを外すと、ラジエータに直であります。シロッコの内側に一定の空間がありますからこれでも負圧はある程度効率よく発生できるのでしょう。

核心部分を外していきます。エバポレータ(右側)はすでに外れていますが、写真中央のラジエータがまだフレームに固定されています。

ここが固定されていると思うんですが、固定方法がよくわかりません。ひっかけてるだけかな。フィン構造にはねじ止めされている部分は無いようですのでおそらくここなんですが….

いろいろひっくり返して分解方法を探しますが手がかりがありません。

ガス周りを組んでから筐体に収めるはずです。パーツを取り付けてからロウ付けしたりなんて絶対やらないはず。どう考えても配管ごと外れてくるはずです。
組み立て工程を想像しながら逆工程を考えます。

いろいろ押したり引いたりしているとあっさり外れました。やはり先ほどのラジエータの部分のひっかけがポイントだったようです。

ラジエータとエバポレータを支えているのが銅配管だけになってしまいましたので、変な負荷がかからないように横に倒して分解を続けます。

外れたPP筐体にはシロッコファンを元通りねじ止めしておきます。要らないリブを落とせばええ感じに使えそうです。

黒い水タンクのガイドは底板にラッチで止まっているだけなので簡単に外れます。

外れました。

残すは底板のみ。コンプレッサは振動防止のためにバネとゴムブッシュで浮かせて保持されています。

外れました。予想通りガス配管ごとごっそりと外れました。
これが欲しかったんです。

動作確認のために縦にしておきます。ラジエータとエバポレータはジャッキで支えます。
この配管は立てて動作することを前提とした設計です。
この配置でしばらく待てばフロンが下に落ちて、動作させてもコンプレッサに無理がかからない状態になるはずです。いわゆる「引っ越しで冷蔵庫傾けたらしばらく静置しておくこと」という処置です。

エバポレータ側。
この写真では主要な三パーツが全部見えてます。これらはガスを抜いた後にばらばらにして再配置します。写真正面のエバポレータは外した後ガス枕に取って代わられますので使わないことになります。

ところで、外したパーツをよく見ると、何やら面白そうなものがついています。

これおそらく湿度センサですね。除湿器ですからどっかについているだろうと思ってました。とりあえず面白そうなので取っておくことにします。
このほかにも水タンクの挿入検出にリードスイッチもついていました。それも回収しています。

コンプレッサを浮かせて保持している部分の構造。

これこのままいただくことにします。ばねとゴムブッシュを回収しておきます。

さて、これで分解は終了です。次は外した冷凍サイクル部分の動作確認をしましょう。
冷凍サイクルの動作についてはここの真ん中あたりに一通り書いていますので復習が必要な方はご一読ください。ただし例によって長いです(笑

要はコンプレッサが回ってガスが圧縮膨張してくれれば何とかなるはずで、そのためにはコンプレッサを回すモータに通電してやればいいはずです。
ということでモータ周りを配線します。モータからの線は三本、そのうち二本の間にコンデンサが接続されています。このことから使われているのは三相誘導モータで、コンデンサは単相交流から疑似的に三相を作り出すための進角コンデンサだとわかります。
この辺の話は日本電産のwebページにめっちゃ詳しく解説がありますのでご一読をおすすめいたします。

コンデンサを含めると、モータから出てくる配線は二本だけですので、それをコンセントに接続してやれば回るはずです。
ちなみに、ご自身で改造される場合は回路をよく見て正しい判断をして下さいませ。みら太な日々は改造の結果起きる事故やケガに一切責任を負うことができません。
最近の高級機器はインバータ制御の除湿器があるかもしれません。その場合はコンデンサはついておらず、モータからの配線はすべてインバータ回路につながっているはずです。
インバータ制御については(あのモーノポンプの)兵神精機の解説をお勧めいたします。

みら太な日々では、制御基板の回路のパターンを追って、このモータが直接100Vにつながっており、ON/OFFをリレーで制御していることを確認しております。
ということで、直結であります。

コンセントケーブルを接続しました。

通電するとコンプレッサが始動し、冷凍サイクルが回り始めます。
数分でエバポレータ側は冷たく、コンプレッサ本体とラジエータ側は熱くなり、エバポレータ側にはうっすらと霜がつきます。

が、さらに数分するとこの霜は消えてしまいます。そしてラジエータ側がかなり熱くなります。ラジエータ側を放熱していないためにフロンガスの液化が上手く進んでいないものと思われます。
ともあれ、冷却サイクルの単体動作は確認できました。成功であります。

やはりラジエータの放熱は真剣にやらないとエバポレータ側、のちのガス枕部分をうまく冷やすことができないようです。
ということで、先外したこのシロッコファンを活用することにします。

このファンは動作解析の時に何も見てなかったので、モータの種類も電圧も何もわかりません。一から解析です。

まずモータの型番でGoogle先生に問い合わせてみます。
….なんの情報も出てきません。

引き出されている線は3本です。これから、コンプレッサと同じ誘導モータである可能性、そしてモータはDCモータであって、3本の線はプラス、マイナスと回転センサの信号線である可能性があります。
配線の色が白黒赤ですので、おそらく誘導モータです。DC+信号線なら電源線赤青と信号線として白か黄色あたりが使われると思われるのです。ですが、赤がプラス、黒がマイナス、信号線が白という可能性もあります。

こんなことを考えながら、取り外してゴミ箱に放り込んでいた基板を持ってきます。
シロッコファンのコネクタが刺さっていたポストのところを見てみると、

コンデンサがあります。ということでまず間違いなく誘導モータですね。

念のためにパターンを確認します。コンデンサを設計通りの位置に接続するためにも確認はだいじです。
赤と白の間にコンデンサが接続されています。そして赤線のパターンはそのまま基板上を這って電源コネクタの片方につながっています。
あとはスイッチON/OFFの制御部分がどうなっているかです。

いつになく詳しい解説を(笑 パターンを追った結果を下に示します。
赤線が100Vにつながっているのは上記した通り。青線のパターンはコンデンサにつながって終わり。怪しいのは黄色い線で囲んだ部分で、コネクタのパターンはその上の小さめの3つのランドの一番下のところにつながっています。おそらくここにスイッチがあります。

基板を表にして黄色の部分に載っているTO-92パッケージの部品を確認します。
まあ、シルクにT1/T2/Gという表記がありますのでその時点で明らかなんですが念のため。

トライアックです。ということでビンゴですね。ゲートはおそらくどっかにあるマイコンのIOポートにつながっています。でT1の方はというと、くねくね回りながら最終的に100Vのもう一方につながっています。
つまり上の写真の黄色と赤の間に100V入れてやればいいわけです。解析完了。

基板からコンデンサ外します。久しぶりにはんだ吸い取り機を引っ張り出します。

90円台半ばの円高だった頃に8000円くらいでたしかDealeXtremeで購入したやつです。

安いのはいいんですが、電源が220Vなのでそのままでは使えません。ということでこの昇圧トランスを使います。
このトランス、会社帰りにエヴァQを見に行った2012年に当時博多駅の南側にあったPC-NETで見かけて即買ったものです。新品3万円くらいのものが1980円という破格の値付け。

コンデンサあっさり外れます。

 

電源ケーブルもジャンクから回収したものが山ほどありまして、

適当な奴を選んで、

配線していきます。

 

 

コンデンサは筐体に両面テープで貼り付けておきましょう。

回してみます。ティッシュペーパが切れて吹き飛びそうな風量です。素晴らしい。

次のステップは冷却サイクル部材の分解再配置の設計です。そのあとはいよいよガス抜きで、さらに分解、再配管、ガス入れ、冷却試験と進んでいきます。
ここから本質的なところに足を踏み入れていくことになります。楽しみ。

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