順調に稼動している自作レーザカッターでありますが、まだやることがあります。それはラスター描画の最適化です。
レーザカッターの動作モードは大きく二つ。ベクターとラスターです。
ベクターはいわゆるカッティングで使うもので、はさみで紙を切るように、切りたい線をレーザがなぞっていきます。それに対して、ラスターは加工対象の面(通常は長方形)を端から端まで走査を行い、データに基づいてしかるべきポイントでレーザをパルス状に発射して加工対象にキズを入れたり焼き飛ばして穴を掘ったりします。
動作スキームとしてはプロッタとインクジェットプリンタの違いと似ています。
レーザカッターと名前が似ているレーザプリンタもラスターモードで印刷像を作っています。半導体レーザが回転するポリゴンミラーで走査されfΘレンズによって回転する感光体上に焦点を結びます。感光体は帯電していて、データに従ってレーザ光が当たったところだけ帯電がなくなります。あとは帯電している所にトナーを静電吸着(逆パターンもあります)して、それを紙に転写して焼き付ければ出来上がりというものです。
レーザカッターのラスター描画はこのレーザプリンタの感光体上の潜像形成までのプロセスをそのままワーク上で行うものです。レーザカッターではレーザのパワーが強いのでワークを削り取って一回限りの描画を行います。
このように、ラスターモードは切断ではなく彫刻のイメージに近いものです。ラスター描画で加工できる対象は非常に幅広く、木や紙、プラスチックはもとより、ガラスや石、タイルや陶器にも刻印をすることが出来ます。上手に条件を整えられれば、非常に美しい絵を書くことが出来ます。
ラスターモードによる加工はベクターモードと並んでレーザカッターを使った加工の醍醐味であり、今回の自作レーザカッターでも何とかものにしたい所です。
ラスター描画とか刻印とか、マーキングとか、彫刻とか、いろいろな言い方で呼ばれるこのモードですが、ここではラスター描画に統一しましょう。
ラスター描画を行うための制御ソフトウェアはMACH3のプラグインを使います。これはMACH3の開発元の手を離れてコミュニティで改良が進んでいるものです。いくつかの種類があります。
一番シンプルなのはARTのプラグインといわれるものです。絵を選んでサイズとスピードを指定してやれば、プラグインがデータを作ってMACH3に渡すというものです。
これを改良して使いやすくしたものがTweakieのプラグイン。
白黒反転させたり、アスペクト比を自動で計算したりと、痒い所に手が届く改良が施されております。
そして、今回使いましたのが、MakerFaireでもお会いしましたTOMTOM さんがさらに改良を加えたTOMTOMプラグインです。Tweakie のプラグインにさらに軸コントロールやディザリングなどありがたい機能が追加されております。
まずはテストであります。
条件出しはテストパターンを使いますが、描画テストに使うのはやはりミクさんです。
まず、Tell Your World のカラー。
これから一部を切り出して階調反転したもの、
これをハーフトーンパターン化したもの。
その階調反転。
などなど。
ではまず厚紙にテストパターンを描いてレーザ出力を決めます。強すぎると何もかも真っ黒になり、弱すぎると何も描画されません。微妙なコントロールなのです。
何回か描かせてみました。このあたりの条件で行きましょう。4mAくらいなので8Wという所ですか。
ミクさんその1。
描いているところ。
ミクさんその2。
元絵がカラーだとなかなかきれいに出力されません。やはり事前のグレースケール化は必須のようです。
モノクロハーフトーン処理のもの。これはかなりきれい。
ARTのプラグインでグレースケール絵を出力した例。
同じグレースケール絵を Twiekie プラグインで出力したもの。かなり違いますね。
とまあ、こんな感じて一定量屍の山を作って条件を出しました。
で、いよいよ本番というか本番の準備というか、文月さんにご依頼いただいている別の案件の準備をしていきます。
別の案件というのはフィギュアの飾り棚、というかなんというか、アクリルで作ったアクセサリと飾り棚が一体化しているというか、そういったものです。
元絵のサンプルとしてお送りいただいたのはこれらの絵。
なかなか細かくて難しそうです。ミクさんで設定した条件で厚紙に描画をしてみます。
まずはルカさんであります。元絵はグレースケール化しています。
描いているところ
横縞が見えますが、階調感はまずまずといったところ。
次。Zeochan のミクさんのイメージです。これは白黒二値なのでまだ何とかなりそうなもの。
これはまずまずかなという感じですが、いまいちエッジにキレがありませんね。まあこのあたりが自作では限界かなという気もしますが。
最後はニコニコ静画の使ってもいいのよから魔方陣。
やはり細かくてエッジが必要な絵は難しいですね。うーんという感じです。
せっかくなので、この難しいやつをアクリルにも描いてみます。
厚紙同様に条件出しをしてパワーを決めます。アクリルの種類によって白化の応答が異なるのであんまりあてにはならないんですけどね。
描いてみました。うーーーーーんという感じですね。 アクリルは難しいです。
材料もほいほい使えるほど安くもありませんしね。
どう見ても汚いです。やはりラスター描画はまだまだ改善を進めないといけません。
最後におまけ。
ラスター描画で、精度はそこそこでも一番インパクトがあるのがこの手の木へのシンプルな加工です。
フルパワーで木を焼き飛ばしますので非常に深く掘り込むことが出来ます。
測ってみたら深さ 1.6mm ありました。
これでキーホルダ作ると目立ちます。ご希望の方は作りますよ。どうぞお問い合わせください。
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