モノの修理にはよく取り組むのですが、最終的には破壊系の結末を迎えることが多いみら太な日々であります。
が、今回は久々の修理完了案件です。
姉より「乾燥機が動かんくなった」との連絡。モノはコロナの CD-PI637 であります。
診てみますと、水タンクのフロートが外れております。水を捨てるときに落っことしたのではないかと思われます。
このような状態です。タンクに留めるための軸が片方折れております。
さらにフロート後方に伸びているアームが途中で折れております。
動かない原因はまことに簡単で、このフロートがついていないためにタンクを本体に取り付けても満水リミットスイッチが作動したままになっているというものです。
念のためにタンク収納部奥にあるリミットスイッチ板を押しながらスイッチを入れるとあっさり動作開始。ということで、このフロートだけ何とかすればよいようです。
偶然なのですが、幸いなことに我が家にも同じ除湿機があるのです。ということで我が家のパーツを見ながら修理方針を考えればよいなと思いつつ、この壊れたフロートを持ち帰りました。
我が家の除湿機からタンクを外しました。全く同じモデルのようです。
両者の比較。折れてなくなった部分が良くわかります。裏にリブが入っていない薄い部分で割れたんですね。強度的に弱くて割れやすい部分が外に飛び出している構造も設計としてどうかと思いますが、それはさておいて修理します。
これを再生します。元の材料はおそらくポリプロピレンです。接着剤は効きにくい材料ですのでネジ止めを考えたほうがよさそうです。
しばし眺めた後、最小限の補修部分を3Dプリンタでプリントして壊れたフロートに接続する方針を決めました。
ということで、折れた部分を図面化します。
最初は我が家のフロートをノギスであたって寸法出ししていたのですが、面倒なので写真をトレースすることにしました。
注意して正面から撮影した上の写真をスケッチアップに取り込んでトレースします。
厚み方向は実測で。
補修パーツは厚み方向の中央にスリットを入れ、腕の裏側に途中まで伸びている補強用のリブを抱き込むようにしてネジ止めすることにします。
スリットの裏側に面を置いて、位置決め&ズレ止めとします。
こちら側でリミットスイッチを押すことになります。
あとは、いつもどおりSTLファイルを吐かせて3Dプリンタにセットします。
プリントしている間に、補修パーツ取り付けに合うように壊れたフロートを整形します。
久々に超音波カッターの登場。
こうなっている所を、
角部分で落とします。リブは残します。
ポリプロピレンだとさすがに楽勝です。切り過ぎないように気をつけなければいけません。バターに熱したナイフを突っ込んでいる感覚です。ほとんど抵抗がありません。
切断部分を新規導入したすばらしいやすりで整形。
最終調整はパーツをあわせながらということで、まずはここで止めます。
次に軸部分。
こんな感じにきれいに折れてしまっています。
ここはR部分の裏に3箇所リブが入っています。折れの一番深い所はそのリブの表面で止まっていますので、このリブ面まで全体を落とします。
こんな感じ。
後ろから見たとこ。
そうこうしている間にプリントは進み、
出来ました。
相変わらずきれいではありませんが、実用性重視であります。
日ごろはつまらない趣味に使うパーツばかり出力しておりますので、久々に人様の役に立つ仕事をしてプリンタもうれしいと思います。
外してやすりでバリを取って仕上げます。
こんな感じに取り付けます。
適当に図面を引っ張った割にはぴったりであります。すばらしい。
タンクにはこんな感じでつくことになります。致命的な当たりや考え違いがないことを確認。
アームの部分hあとりあえずセロテープをぐるぐる巻きにして仮固定し、軸部分に取り掛かります。
軸部分はフロートが動くときの支点であり、フロートの重み含めて結構力がかかる所でもありますので、プリントパーツによる再生ではなく、ネジ追加による取り付けにします。
まず反対側と軸中心が合う位置に下穴を開けて、
M3のタップを立てます。PPなので手で作業できます。手で作業できるということは強度的に弱いということでもありますので、ねじ込み奥方向にあるもう一枚のリブにも穴を開けてそこもタップを立てます。二箇所で支えることで強度が一気に上がります。
仮止めしたところ。
この状態で除湿機にセットし、まず除湿動作をすることを確認します。リミットスイッチをちゃんと押しているかどうかの確認です。
次にフロートを持ち上げた上体でテープで固定し、除湿機が満水状態で停止するかどうかを確認します。
最初の仮止め位置ではフロートを上げてもリミットスイッチが外れませんでした。これでは満水になっても止まらず、水があふれて大変なことになります。
ということで、先ほど整形した部分を再度削りこみながら正常に動作する位置を探していきます。
最終的に1mmほど削り込んだ所でちゃんと満水検知をするようになりました。
この仮固定状態でテープごとドリルでリブに貫通穴を開けてネジ穴位置を決めます。
その位置にM2.4のタッピングをねじ込みます。がっちり固定されます。まず問題ないでしょう。
軸に使うネジはM3のSUSです。
ナットを入れてフローとが横に動かないよう位置決めします。
完成です。
満水状態になったとこ。
ということで、姉宅に持っていって取り付けてやりたいと思います。
今回は幸いにも全く同じものがありましたのでたいへん楽に修理できました。
それにしても3Dプリンタの便利なこと。
思い返しても、生活に使うものを修理するために3Dプリンタを使ったのは始めてのような気がします。
いまさらながら新時代の幕開けを感じております。
そのうちにメーカ-から図面の開示とかあるといいんですけどね。保証の問題がありますので難しいと思いますが。
ということで、久々の修理ネタでした。3Dプリンタバンザイであります。
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