オーバーホールしたパーツを組付けていきます。
まずは作業台を片付けて、
塗装した板金類を持ってきます。こうやって見るとなかなかきれいに仕上がっているように見えますね。
実際はこんな感じに古い塗装の剥げ後の段差があるんです。
まあそれでも錆だらけ、禿げだらけよりはずいぶんとマシですから良しとしましょう。
では組付けていきます。このフロントパネル兼底板の板金から。
まずそこにキャスターつけます。
このサブ板をM5のボルトナットで締め付けるだけです。
立てて、
いい感じです。このキャスターの耐荷重は10kgなので、合計40kg。重心の偏りを考えるとあんまり余裕があるとは言えませんが、まずはこれで使ってみましょう。
フロントパネルから組付けていきますが、ひっくり返りそうなので、重たいこれを乗せておきます。
圧力計。
ねじ止めするだけ。
電圧計。裏からM3のナットで迎えに行くだけ。
スライダックの電圧調整
スライダック本体。かなり重たいです。
ツマミをつけて、フィルタ、パイロットランプ、ヒューズ、スイッチを取り付け。
これブレーザーと呼ぶようです。そのブレーザーを取り付け。
配管します。これでフロント周りの取り付けは完了。
電気周りに入ります。
この電源ケーブルは汚いし硬いしプラグは曲がってるしということで廃棄です。
代わりにこれを使おうかと思いましたが、
そういえばごっついケーブルがおもちゃ箱にあったやんと思い出して持ってきました。
廃棄したホットプレートに使っていたものです。これなら容量的に文句はないでしょう。
では一旦外したヒューズの端子にはんだ付けをしようとしてヒューズにダメージが無いように外しておこうとしたところ、すでにダメージが(笑
これは取り替えであります。15Aと読み取れました。100Vでそんなに流れることは無いと思うんですけどね。5Aもあれば十分なのでは。
裏側を書きとっていた回路図通りに接続し、
トランスをねじ止めして端子を接続します。
これで一次側の電気配線は終わりです。
二次側を組み付けていくには例のでっかいダイオードを背面板にねじ止めしたりして箱を作っていかねばなりませんので、その前に電解槽を乗せることにします。
電解槽は掃除こそしっかりしましたが、パッキンがありません。ということでパッキンを作ります。
使ったのはホームセンターで購入したNR(天然ゴム)の3mmt板。「天然ゴムでいいのか?」と思いますが、このあたりを見る限り、アルカリには何の問題もないように見えます。
まあダメだったら取り換えればいいやという安直な考えでとりあえず使ってみることに。200mm角で300円くらいしかしませんので惜しくもないですしね。
ということで、電解槽の口径を測定し、それから5mm程度内側にはみ出るサイズで丸穴を開けます。コンパスカッターが初めて活躍しました。
が、外側の円を切り出すには長さが足りません。仕方ないので直線切りを重ねて合わせ込んでいきます。
まあこんな感じかな。
陽極になる上蓋を乗せて、
ボルト穴と干渉しないことを確認します。
パッキンができましたので、電解槽を本体に組付けます。
先に長ボルトを通しておいて台座へ固定します。
さて、いよいよ電解液の調製です。
ここでもサンウェルダーの情報を参考にしていきます。会社にありましたサンウェルダーの取説によりますと、電解液は水酸化カリウム水溶液で、濃度は5%弱といったところのようです。
本当は日本ジュラックス社に電解液のことを教えてもらいたいところなのですが、同社はどうももう無いようで、電話をしてもずっと話中のままです。
いずれにしても同じことを目的とした同じような仕様の商品なので中身も同じようなもんだろうと勝手に決めつけて水酸化カリウム水溶液を準備することにします。
で、水酸化カリウムです。
なんでこんなの持ってるんやという声もあるかもしれませんが、水酸化カリウムは薬局で買えますし、アマゾンでも売ってます。劇薬ではありますが、石鹸つくりなんかにも使われていますので、印鑑さえ押せば購入は可能なのです。
私はガラス基板の有機物を徹底的に分解掃除したくなった時のためにこれを持っておりました。
秤を持ってきて、
写真がひっくり返ってますが、とりあえず100g計りとって、
これは今回購入してきた蒸留水2Lに溶かして、とりあえず5%弱(4.76w%)の水溶液を作ります。
インスタントコーヒーの空き瓶に放り込んで、蒸留水をどばーっと入れます。溶解熱で一気に温度が上がりますので、あらかた溶けたら電解槽に放り込みます。アルカリの濃い水溶液をガラスに入れとくのは怖いのであります。
電解槽のサイズから考えて、電解液が2Lでは足りないことは想定済みです。蒸留水はもう一本買ってあります。
水量の適正値はわかりませんが、どう考えても電極は漬かっている状態になっているはずですので、このあたりまで新たに蒸留水を入れたします。この時点で水酸化カリウムの濃度は下がりますが、あとで調整します。
パッキン乗せて、
陽極を、
かぶせつつ、すべての長ネジを穴に通しつつ、となかなかむつかしい作業をやります。
パッキンがただの平板なのでずれまくります。途中でパッキンをマスキングテープで上蓋に固定して作業を続けました。
乗った状態でパッキンが大きくずれてないことを確認します。
大丈夫そうなので、上蓋をナットで締め付けていきます。ゴムパッキンなのでナットはどこまでも締まっていきます。加減しつつ漏れがないように均等に気を使って締めます。
ここで溶液量の最終調整をします。
割らないようによそにもっていっていたこの浮きを持ってきて、
電解槽に入れ、約20mmくらい先端が飛び出すように蒸留水を入れ足します。
濃度はさておき、電解液の量は適正になりました。
ここで、蓋のパッキンを作ります。
蓋のパッキンは30mmφというところで、真ん中に10mmφくらいの穴が開いています。その1で触れましたが、過圧防止のベントバルブ用のガス抜き穴です。
大きさが合うようにいくつか試作して、
こんな感じかな。
ピッタリであります。
これで蓋もOK。
かなり形になってきました。
やはりきれいになると嬉しいですね。
中の構造も動作原理も完全に理解しましたので、何があっても大丈夫という自信がつきました。
あ、電解液の最終濃度調整を忘れていました。それをやっておきます。
最初に作った約5%、2Lの水酸化カリウム水溶液にどれだけの蒸留水を入れ足したかを調べます。
秤持ってきて、殻になったほうのボトルの重さで風袋を切ります。
で、入れ足した残りを測定すると、720gと出ました。
差し引きして蒸留水を1.3L近く入れ足したことになります。ということは水酸化カリウムの濃度は3%台の前半まで落ちてますね。
電気分解なんでとりあえず電流流れれば大丈夫なんですが、サンウェルダーの取説記載と2%近くずれますので、もう少し合わせときます。
再び水酸化カリウム持ってきて、
50g位を、
上の小さい口から投入します。このくらいの濃度なら水酸化カリウムはまだまだ余裕で溶けますので混ぜる必要はありません。つか、もう上蓋外したくないです。
これでだいたい4%付近まで濃度は上がったはずです。
適当に作ってますが、こんなもんでいいでしょう。どうせ電気分解で溶液濃度は上がっていくのです。一定に維持しようと思ってもそもそも無理なのです。
では最終段階。電気周りの二次側を組んでいきます。まず背面板にダイオードを取り付けます。
ちなみに、今回この背面板には塗装をしませんでした。スプレーが無くなってしまったのです。まあ背面なんで見えませんし(笑 そのうち塗ることにします。
締め付けて、背面板を取り付ける前に、
ここを繋ぐのを忘れてはいけません。
接続しました。ボルトナットで配線できるのである意味楽であります。
背面板取り付けて、
ダイオードのアノードを、
トランスの二次側に接続します。
電源コードを引き込みます。
接続はカシメでいいでしょう。
左側板についていたこのお疲れファンは廃棄して、
おもちゃ箱にあったこのファンに交換します。仕様は同じです。
穴径も同じなので何の追加工も要りません。
元通り組み付けるだけ。
側に止めます。ここらのネジも全部黒染めの新しいM4ビスに交換しました。
改めてみると結構ギリな設計になっています。
最後は電解槽の陽極配線を背面板に繋ぎ込みます。背面板にはダイオード二本のカソードも接続されていますので、これで回路が閉じることになります。
上蓋を取り付ければ組み立て完了、そして結構な手間をかけたレストアの完了です。
作業した私にはいろいろあらが見えるのですが、初めてこの装置を見る方にはそれほど悪くない外観と感じていただけるのではないかと思われます。
黒染めのネジもアクセントになっていていいですね。
出はいよいよ動かしてみます。
ヒューズも改めて買ってきました。セットしてパイロットランプが点灯するのを確認できましたので回路接続もとりあえず一次側は大丈夫ということかな。
実際に動作させるにはノズルが必要です。酸水素ガスを使うときにはこのノズルが結構曲者です。酸水素ガスの燃焼速度は非常に速いので、燃焼速度に負けないスピードでガスを噴き出してやらないと炎が逆流して装置内部に火が入ってしまうのです。
通常のプロパンのようなガスを使ったバーナーではこれは起こりません。なぜならプロパンそれ自体、プロパン100%では燃えることがないからです。プロパンガスの燃焼には酸素が必須です。なので酸素が存在しないガス管の内部では燃焼のやりようがない、ガスはノズルの先から大気中に出ることによってはじめて燃焼条件を満たします。これに対して酸水素ガスは、その1でくどくど説明しましたように、最初から燃えるもの(水素)と燃やすもの(酸素)が混ざっています。ので管の中だろうが何だろうがどこでも燃焼します。炎がガス流速に勝ってノズル内部に逆流する現象は「逆火」と呼ばれています。これは非常に気をつけて避けなければいけない現象です。
さらに、酸水素炎ではもう一つ独特の現象があります。それが爆縮です。爆縮ってあんまり聞きませんよね。普通は爆発です。破裂して広がるイメージです。
これに対して爆縮は文字通り爆発的に内に向かって縮む状態を指します。通常の生活の中に爆縮はまずありません。水爆とか慣性核融合とか、そのあたりで聞くくらいかな。これも通常の生活ではないか(笑
で、爆縮です。酸水素ガスは爆縮します。
酸素と水素が化合すると水になります。これは中学の理科レベル。ほとんどの方がご存知のはず。酸水素ガスも燃焼によって水ができます。
もう少し突っ込んで高校化学レベルに進みます。水が1モル生成されるためには酸素0.5モルと水素1モルが必要です。そして理想気体1モルの体積は分子種に関係なく約22.4Lです。ということは、(理想気体を仮定して)酸素ガス11.2Lと水素ガス22.4L(面倒なので”約”は外します)が反応すると水ガスが22.4Lできることになります。これはガス1.5体積が反応してガス1体積ができることを意味しますから、体積は2/3になることになります。これがまず爆縮その1です。これはまだ大したことないですね。2/3ですから。
ここでさらりと水ガスと書きましたが、水ガスって何でしょうか。そう水蒸気です。つまり、酸水素ガス1.5体積から、水蒸気1体積ができるというのがまず気体としての反応です。体積が減りますから、当然爆発ではなく爆縮が起きます。(ここでは話を簡単にするために、反応熱による気体の膨張は無視します。悪しからず)
そしてさらに、一部の水蒸気は熱を放出して液体の水にまでなる可能性があります。というかほとんどがそうなります。
ここでもう一つ化学の復習になりますが、液体と気体の水の体積比は1200倍以上でしたよね。具体的には、水1モルは18g=18ml、水蒸気1モルは22.4L、よってその比は1244.4444という値になります。(1気圧、常温、等々条件はありますが、生活環境一般において)
つまり、仮に酸水素ガスの燃焼によって生じた水蒸気すべてが周囲に熱を輻射して失い、液体の水になった場合、その体積は元の酸水素ガスの2/3のさらに1/1244になります。
これはほとんどゼロになるといってもいいくらいの変化です。現象としては、酸水素ガスがあったところが一瞬のうちに真空になったように見えることになります。
これがもう一つの、そして主たる酸水素ガスの燃焼結果としての爆縮です。
ここで、燃焼の時には反応熱が解放されますので、その熱によって水が水蒸気のままに維持されるのではないかという疑問が起きます。が、実際はガスが広がる極めて疎な空間内で燃焼熱が発生してもその熱はすぐに輻射によって散逸してしまいます。熱とはすなわち物体の運動であり、気体の場合は並進運動と一部の振動回転運動に帰結します。よって、燃焼によって水蒸気としての水分子が運動エネルギーを得ても、すぐに周りのチューブ壁などに衝突してそのエネルギーを渡してしまい、チューブ壁材の振動エネルギーに変換されます。そして、運動エネルギーを失った水分子は同様に運動エネルギーを失って並進速度が低下した周辺の水分子と水素結合して液体の水になります。この時新たにエンタルピー変化による熱(凝縮熱)が放出されますが、それも同様に散逸します。こうして水蒸気の凝縮が進むと、先の1/1244の体積変化が起きますので系の気圧が低下します。気圧が低下するとチューブ壁から離れて運動していた水分子の運動の平均自由工程が大きくなりますので、チューブ壁と相互作用する確率が上がり、結果これらチューブ壁から離れていた分子もエネルギーを放出して液体になります。以下、同様のプロセスが加速度的に進み、最終的に空間内には気体の水はほとんど存在しないような状態になります。
実際はこれらの変化は一瞬のうちに起きます。これが爆縮です。
このように酸水素ガスは非常に特徴的な動きをするガスです。がしかし、特徴的、不思議に見えるその振る舞いは、燃えるもの(水素)と燃やすもの(酸素)が最初から共存している、燃焼の結果爆縮する、というこの二つの物理化学で完全に説明することができます。
これを踏まえて改めてHHOとかブラウン何とかとかのトンデモ系の主張を見てみると「ははーん」というところがあります。知は力なり。
さて、大きく脱線しました。
こういった背景を理解しつつ、爆縮しないノズルを作ります。
ガラス管を持ってきます。その昔CO2レーザ管を自作していた時の遺産です。
この辺でいいかな。
バーナー作るのにバーナーを使います。
まずガラス管を適当な長さに切って、
一端を引き延ばしてキャピラリを作ります。これでノズル形状になりました。
出口は細いほど同じガス圧での噴き出し速度が上がりますので逆火の可能性は下がります。但し、炎はそれだけ小さくなります。
次にジャンク配線を持ってきます。
被覆を剥いで、
くしゅくしゅに丸めて、
ガラス管に突っ込みます。これで逆火の可能性を幾分か下げられるはずです。
もし火がノズル内に入ったとしても、チューブを遡るためにはこのメッシュを通過しないといけません。メッシュは金属でできていますのでよく熱を吸います。
よって火がこのメッシュを通過する際に熱がメッシュに吸われて、ガスの温度が燃焼点である570℃以下に下がり、自己消化することを期待するものです。効果のほどはわかりません(笑
ではいよいよ実験です。
結論から申し上げますと、実にうまく行きました。笑っちゃうくらい予想通りかつ期待通りの動きでした。
動画でどうぞ。
ということで、ヤフオクでいろいろ込み1万円で手に入れた酸水素ガス発生装置は完璧な復活を遂げました。満足であります。
実際に使っていくにはノズルをもうちょっとなんとかしないといけませんが、そこはさすが何でも売ってるAliexpressであります。ちゃんとありました。
それほどお高くもありませんでしたのでポチっております。そのうち到着するでしょう。
こちら。需要は極めて限られると思いますが(笑
ということで、かなりのリスクを抱えての落札でしたが、結果として大成功でありました。
これから特に「これに使おう」という用途を持っているわけではないんですが、そこはそれ、所有のよろこびというのがあるじゃないですか。マシンを持っているとそれでできる作業を思いつくものです。持つべきものは道具なのです。
コメント
とても勉強になりました。
水酸化カリウムや NaOHは入手が難しそうです。
溶かした水酸化ナトリウム水溶液はモノタロウにありましたが、濃度がよくわかりません。
セスキ炭酸ソーダ(Na2CO3)でも電気は流れそうなので、HHOは発生できますでしょうか?
水酸化カリウムが無難と思いますよ。
アマゾンで石鹸作り用のものが手に入ります。
濃度は5w%位でいいとおもいます。
あと蒸留水をお使いください。水道水だと塩素ガス出て臭いです。