ガス冷却ペルチェ方式霧箱 その6 ガス枕設計着手

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ガス枕とはなんとも不思議な言葉です。
ガス冷却システムのエバポレータ部分、つまり冷媒が液体から湿り蒸気、さらにはガスに変化する空間のことなのですが、CPU冷却の人たちの言葉なのかな、あるいは研究者の言葉なのかもしれません。温めるほうはヒートベッドなどといいますが、冷やすほうは枕のようです。面白いですね。

で、そのガス枕です。
改造中の除湿器のエバポレータを取り外して、その代わりに接続します。材料はジュラルミンで、この度動くようになりましたCNCマシンで、板材から削り出そうと考えております。
ガス枕もアルミの削り出しも全くやったことがない世界ですので不安でもあり、楽しみでもありというところ。まあ、削り出しは先人たちの経験が山積みで、ネットには豊富な情報がありますし、ガス枕は冷媒を蒸発させて気化熱を奪う部分ですから、物理現象は非常に単純です。効率をさておけば何とかなるような気がします。
何にせよ冷媒が漏れてしまうと話になりませんので、気密には注意が必要。加工には一定以上の精度が求められます。内部の圧力はそれほど高くはないはずですが、それでも1-5kgf/cm2、今の単位系なら100-500kPaといったあたりの圧力はかかるはずです。さらに-30℃くらいの低温になる可能性がありますので、シールをしっかり考えておかないと、適当にその辺のゴムなんか使うとカチカチになって用を成さない可能性があると考えています。

そんなことを考えながらガス枕とそれに続く霧箱本体の設計を進めています。
これからどんどん構造は変わるのだろうと思いますが、今のところこんな形を考えています。ガス枕の上にペルチェ素子を4つ並べ、その上に霧箱本体を乗せます。霧箱の窓はガラスで作り、密閉して水蒸気が入らないようにしたいと思っています。窓部分は曇りが出ないように二重ガラスにするかもしれません。

ガラス窓を外すとエタノールのプールがあります。深さは4mmとし、液体状態のエタノールが常にプールを作っている形にします。これは林式霧箱という方式で、過冷却気体の層が厚くなり、結果として放射線の軌跡が観察可能な空間の体積を増やすことができるのです。

プールを外すと40mm角のペルチェ素子が敷き詰められています。
2016年のMFTに霧箱を出展した時は、チャンバのサイズがペルチェ素子1枚分でしたので、今回作るのは4倍の面積を持っている大サイズです。

ペルチェ素子を外すと問題のガス枕があります。ペルチェ素子のホット側を強制的に冷却し、できれば常に氷点下に保ちたいと考えています。こうすることでペルチェ素子の冷却側、つまりプール内にたまったエタノールはマイナス30-40℃まで冷やすことができるはずです。このくらいまで冷やすと放射線の軌跡はたくさん見えるようになります。

ガス枕の内部にはこのように溝が切られており、一方通行の冷媒の流路が形成されています。蓋は下からしています。こうすることで上面が真っ平らになりますので、ペルチェ素子との密着性が上がり、より効率的に熱の移動が行えると考えています。

裏返して蓋を取ったところ。この形状では冷媒の入り口と出口で温度の偏りが出るかもしれないなと思っています。このあたりはやってみないとわからんのです。
蓋のシールはシリコンゴムか液体ガスケットか、シリコンシーラントあたりを考えています。エポキシはおそらく低温では役に立ちませんし、アルミハンダのような分解不可能な接続も行いたくありません。
9ヶ所でねじ止めをしますが、これでも足りないかもしれませんね。

ということで、わからないことだらけですが手探りで進めています。

その他材料はほぼそろいつつあります。
すでに紹介しておりますが、まずメルカリで入手したこの除湿器。すでに分解中ですが、ガスラインには手をつけておりません。コンプレッサをインバータ駆動しようと思い、インバータを物色しています。なかなか高いのでどうなることやら。

ペルチェ素子はいっぱいあります。
無理させると思うのでもう少し買っとく予定。

温度測定用の熱電対。プローブがやや太いんですが、一本150円くらいしかしなかったのでまあいいかと。

購入したAliexpressの商品はこちら。

AliExpress.com Product – K-Type Thermocouple Probe Sensor 10cm/30cm/50cm Temperature Controller -50C to 1200 with Cable For Digital Thermometer

間違えて買ったYypeTの熱電対(笑

すでに実験で使った半導体温度センサ。センサは秋月のMPC9700A

MAX31855を搭載したTypeK用の温度センサモジュール。SPIでArduinoと接続できる。

と思ったら、31855は3.3VなのでArduinoとは直接繋げなかった。ということでレベル変換モジュール。作ってもいいけど、手間考えると中華通販のほうが圧倒的に安い(笑

それぞれこちら。

AliExpress.com Product – IIC I2C Logic Level Converter Bi-Directional Module 5V to 3.3V For Arduino
サービスポート、チューブピアシングバルブとユニオンなどのジョイント類。

モノはこのあたり

目下の問題はこれ。HFC-134A用のサービスバルブです。三回買って三回ともねじが合わない(笑 三回とも134A用と説明されていたにも関わらずです。日本と海外ではねじ規格が違うのかもですね。これは中華通販は諦めて、モノタロウかamazonで買うことにします。なんだかんだで1000円くらい使いました。

HFC-134A。未開封のボンベ。

回収用の空き缶。すでに書きましたように、近所の自動車整備工場のごみ箱から見つけてもらいました。

そのほか必要になりそうなものとして、熱伝導性が良い銅板、熱伝導テープ。テープは黒い奴で、テープの中でも熱伝導率が比較的高い奴です。

霧箱内のイオンを抑制するための高圧電源。今は亡き日米無線電機(橋の向こうの方)とAitendoの一階のキットショップ(キーボードの遊舎工房の向かい側)で入手したやつ。

ガスサービスチューブ。厚見てもなんもわからんかもしれませんが、冷媒触る人はみんな使っているみたいなので(笑

モノはこちら

最後にガス枕を削り出すためのジュラルミン板。90mm角で、3、5、10mmtの三枚を購入しました。

アルミの板材はミスミなんかでも売ってますが、なかなかに高いです。
ということで、Google先生を頼りにしながらネットをさまよったところ、こちらのコウイチロウさんが最も安かったです。A2017材、90mm角、10mmtの切り出して600円台。もちろん送料はかかりますが、その辺のホームセンターで材質が分からないアルミ材を買うよりははるかにお得で安心です。

ペルチェ素子はこんな感じで並べるつもり。

その上にプール部分を乗せて、

間にペルチェ素子が挟まる状態になります。

まずは一回削りにトライしてみましょうかね。ガス枕作らないと除湿器のガス抜きに取り掛かれません。
でも、アルミの厚板をいきなり削るのは怖いですねえ。削りに失敗するか、エンドミル折り飛ばすか、なんか起きそうな気がします。どきどき。

コメント

  1. ファインダーの人 より:

    毎回のことながら恐るべきDIYパワー憧れます。
    既製の除湿機を使うにしても、インバータ化とか抜かりないですね。

    あまり関係ありませんが、パソコンのCPUの水冷、液冷が流行り始めた頃、水冷ジャケット(ヘッド)が水枕と呼ばれていたため、ガス冷却だからとガス枕なる言葉が生まれたのだと思います。
    2005年ぐらいでしょうか。PCの冷却器関連の自作で液体窒素冷却まで出てきてなかなかすごみがありました。

    • みら太/mirata より:

      なるほど!水枕からですか、納得。
      実は私の昔の上司が冷却CPUによるオーバークロック記録で日本の三本指に入る人でした(笑