ペルチェ素子冷却霧箱の作製 番外

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ペルチェ素子冷却霧箱 
   ※必ずペルチェ素子で冷却するとは言っていない

今回は番外編です。とあることでドライアイスが手に入りましたので、ノーマルな霧箱を作ります。
いやせっかくドライアイスがあるのにただ昇華させるだけではあまりにもったいないので。
ということで、ドライアイスがなくならないうちに一気に作る必要があります。

こちらがドライアイス様。-79℃。ほぼほぼ200Kですね。液体窒素(-196℃)と混ぜると引き算効果で絶対零度になるという…
 ※なりません
 

設計します。突貫工事なのでスピード最優先であります。
ケースはこんなんで行きましょう。

次に冷却部分です。
ドライアイスの上にアルミの板を乗せて冷却板とします。このときイオン化の軌跡がわかりやすいよう黒のアルマイト板を使います。
ずっと前に東急ハンズで買ったこの板を使います。

ペルチェ素子冷却の際も使えるようにサイズを考えて切り出します。
厚さが0.5mmしかありませんので、定規をあててアクリルカッターでケガキ線を入れ、

机の角で上から板で挟んでキコキコやるとすぐにきれいに折れますというか金属疲労で割れます。

さらに切って、60mm角の板にします。切断面をマジックで黒く塗ると切り口が目立ちません。

次に発泡プラ板を切って保温箱を作ります。カッターでひょいひょい切ります。
これも断固黒を使います。 ここまで黒にこだわるのは、一度でも霧箱を作ったことがある方ならわかるはずです。そう、背景が白いとほとんど軌跡が見えないのです。

エポキシで接着して、

箱を作ります。

接着剤が固まるまでの時間に上で描いた図面をばらして2mmのアクリル板をレーザカッターで切り出します。

切ってるとこ

出来たもの

こんな感じの箱を作ります。まさにラピッドプロトタイピング。

今回はさらに高速化支援のために秘密兵器を投入します。
紫外線硬化型接着剤です。

初めて使います。
LED箱の中から適当に紫LEDを持ってきます。一応紫外線となっていますが、400nmをちょっと切ったくらいの物を使ってみます。秘蔵の375nmLEDがあるのですが、ここは温存して様子見です。

使ってみました。
結論: 今後はこれですね。値段の問題ではないです。恐ろしく楽です。
しゃばしゃばの低粘度状態の接着剤をアクリル板の隙間に流し込んで、LEDを照射(一灯20mA)すると一瞬で固まります。
今後はエポキシに加えて紫外線硬化型接着剤をみら太な日々の公式接着剤に採用します。

さて次に、霧箱の核である霧を作るための仕掛けをします。といっても簡単。
こんなコットンパフを嫁さんからもらって、

細長く切り、

意味ありげに設けられたアクリル箱の棚に接着します。もちろんここも公式接着剤を使用。

そんなことやってる間に、公式接着剤二号のエポキシが固まります。

こんな感じで保温箱をアクリル箱の中に入れま。

ではいよいよ冷却&観察開始です。
 保温箱の中にドライアイスを放り込んで、

隙間を埋めるために別のドライアイスのかけらを乳鉢で、

粉々にします。

これを保温箱に隙間なく詰めて、

先ほど切り出したアルミの板を乗せます。

それをアクリル箱に収めれば出来上がり。簡単なもんです。

ここでアルコール登場。エタノール80%IPA20%品。どこのドラッグストアにでも売ってます。

上部のパフにアルコールを沁みこませます。

観察開始。ここからは動画がたくさんです。

まず、霧箱の「霧」の状態を観察してみましょう。
このなんとも知れないしょわしょわした状態が必要なのです。よくよく見ると宇宙線をキャッチしています。わかるかな。

宇宙線が強く反応するイベントを待っていると時間がかかるので、線源を放り込みます。

どうです?きれいでしょ。
とてもとても幻想的な眺めなのです。時間を忘れて見入ってしまいます。すばらしい。
ライトの当て方が難しいので、今後の参考にするためにいろいろと探りながらデータを集めていきます。
横からも見てみましょう。

ちなみに、ここで使っている線源は某社のマントルです。お店までガイガーカウンタ持って行って放射線が出ているのを確認して購入したものです。
ランタンの明かりを安定させるために微量のトリウムが含まれています。これから出るガンマ線の軌跡が見えています。

線源をネオジム磁石の上に置いてみます。軌跡を作っているものがアルファ線のような荷電粒子ならば軌跡がカーブを描きます。が、これは全くまっすぐです(軌跡が出来る瞬間の動きをみてください)。
ということで、ガンマ線です。

全景はこんな感じ。

刻々と変化しますので写真を撮るのは非常に難しいです。

さて、ここで鉱石も実験してみましょう。
わたしの母はいろいろと趣味の多い人でしたが、そのひとつに石拾いがありました。
で、これは母が遺したもので「ウラン鉱石」だと聞いています。ブラックライトを当てると点状に光りますが、ガイガーカウンタにはそれほど反応しませんでした。

で、置いてみますと。なにやら結構な量の軌跡が見えます。エネルギーはそれほど大きくはないようにも見えますが、霧箱には定量性はほとんどありませんのであてにはなりません。

写真で。

ということで、久々に霧箱を作って楽しいひと時を過ごしました。
加えて、ペルチェ素子で作製する際の照明用のLED配置など多くの知見を得ることもできましたので、たいへん有意義な実験だったと思います。

最後に、アクリル板はアルコールに弱いと言う話がありましたが、ほんとのようです。
しばらく実験しているうちにアクリル板にひびが入ってかけらがぽろぽろ落ちてくるようになりました。

ひどいものです。

ひびはどんどん成長していきます。

ということで、霧箱をアクリルで作ることはあきらめる必要があります。ガラスかポリカーボネートあたりですかね。
これについてはもう少し実験が必要のようです。

コメント

  1. 秋吉優史 より:

    初めまして、大阪府立大学放射線研究センターの秋吉と申します。
    これまでペルチェの物も含めて色々な霧箱を作成してきました。
    アクリルの切り出しなど、物凄く綺麗な工作をされていますね!

    もっとも、ドライアイスを使うのであれば、ダイソーのコレクションケースを使うのが一番楽です。ほとんどそのまま何もしなくても霧箱になります。

    それから、霧箱で観察できるのは基本α線です。
    数MeVのエネルギーがありますから、
    ネオジム磁石程度の磁場では曲がりません。
    曲がったように見えることもありますが、気流の関係で飛跡が曲がって見えるだけです。

    霧箱の条件が良ければβ線も見えます。トリウムを含んだマントル線源を、ケースの外に置いてみれば分かります。α線はプラケースを透過できませんから。
    β線は軽いので曲げられる可能性はありますが、それ以前に空気中の分子にぶつかり散乱されるため、なかなか観察は難しいかと思います。

    そして、γ線は相互作用が弱すぎて見えません。
    途中で光電効果を起こして電子をはじき出せば、電子線が見えますけど、イベント数としては非常に少ないと思います。

  2. 秋吉優史 より:

    訂正です。
    γ線も観察できました。マントル三枚セット丸ごとぐらいの強さの線源が必要ですが、β線を遮蔽してもγ線によってはじき出された電子が観察可能です。
    クリアに観察するためには、高圧印加してチャンバー中のイオン対をスイープして上げるなどの工夫は要るかと思いますけど。

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