完成宣言をした後も延々と改造が続いているレーザ加工機ですが、さらに大手術です。長期休みならではの作業ですね。
今回の改造、いや改良はキャリッジのがたつきをなくすことです。このがたつきはシャフトに対して垂直方向のがたつきとキャリッジを回転させる方向と二つがあるのですが、いずれも非常に小さなものです。しかしながら、回転方向のがたつきはレーザの入射方向に対する第三ミラーの角度を換えますので描画への影響が大きいと懸念されます。これはベクター描画ではまず気にならない誤差レベルなのですが、ラスター描画をする際には良くわかります。たとえば、X軸をスキャン軸にする場合とY軸をスキャン軸にするときを比較すると、X軸をスキャンしたときの像が若干ぼけるのです。人間の目は鋭いので結構気になります。
どれぐらいのがたかというと、これぐらいです。
現在の構造はキャリッジの中央ではなく端っこににベルトを固定し左右引っ張っていますので、走査方向が変わるときにキャリッジには回転方向の力がかかっているはずです。つまり、右に引かれるときと左に引かれるときで第三ミラーの角度が若干ながら変わっている可能性があるのです。ラスター描画はキャリッジの往復双方で描画がなされますので、このズレがあると走査ごとに若干ずつ行が位置がずれることになり、これが結局描画像のボケの原因になっていると思われるのです。
うえの動画は手で無理やり動かしていますので結構ぶれていますが、ベルトで引いたときに実際の所どの程度ずれているのかはわかりません。しかしながら、この手の事柄は気になり始めると夜も眠れなくなるたちなのでこの機会にやっつけることにしました。
そもそもこのがたの原因は何かといいますと、X軸の保持にリニアブッシュをシャフトあたりひとつしか使っていないことにあります。リニアブッシュはリニアガイドなんかと違ってがたが結構あります。がたを減らすにはいくつかブッシュを使います。シャフト方向にブッシュを連ねてキャリッジを固定することで、ブッシュ端の距離が増えますので回転方向のがたは小さくなっていきます。
では早速設計変更です。
現状こうなっている所を、
このようにブッシュをシャフト当たりひとつずつ増やし、二連にします。
こうすることで生じるデメリットは、X軸方向のストロークがブッシュひとつ分減ることですが、現状はキャリッジがリニアブッシュよりも大きいので、設計上はほとんど減ることはなさそうです。 ただし、いまタッピングネジでキャリッジのベースに固定されているブッシュホルダがネジ止めできなくなります。
ブッシュとベースの間にネジ穴を作ってとめることが出来ないかとも考えたのですが、ブッシュホルダの高さを変えずに作りこむことは難しいようです。ブッシュホルダの高さが変わるとキャリッジ上の第三ミラーの高さが変わってしまいますのでこれはやってはいけません。
ということで、あまりやりたくないのですが、ブッシュホルダとキャリッジの間は接着することにしました。これで今後の変更は総換えということになります。
さて、まずはリニアブッシュ二個分を保持するホルダを作ります。
最近調子がいまいちの3Dプリンタさん。たまにサーミスタが接触不良を起こしてヘッドの温度が下がるか、とんでもない高温になって焦げるか、といったトラブルが起きています。
今回も一度止まってしまい、二度目での成功でした。
原因はすでにわかっていて、暫定対応もしているのですが、暫定ではだめになってしまったようです。
交換部品は買っていますのでレーザ加工機をやったあと抜本改善するつもり。
ブッシュ二個分で若干キャリッジよりも長くなりますが、ストロークの端っこはエアチューブなんかも引っかかりますのでそんなにぎりぎりまで寄せられるわけではありません。ほとんどロス無しで改造できそうな感じです。
ちなみに、現在のストロークは、320mmというところ。「A4のワークが加工できる」ことを目指した設計となっております。
ではばらしていきます。ブッシュを増やすにはX軸をかなりの所までばらしてシャフトの端っこを露出させないといけません。
まずベルト類を外して、
X軸駆動用のステッピングモータ外して、
一方のY軸に乗っているX軸シャフトホルダを取り外します。これでシャフトの端から追加のブッシュを入れられます。
キャリッジも外して、
追加ブッシュをホルダにインシュロックで固定します。
X軸シャフトホルダを元通りにして、
キャリッジ固定の位置だしをします。
こんな具合でエアホース側にすこしはみ出させます。これでほとんどストロークは無駄にならないはず。
これまで使っていた一つ用ブッシュホルダ。ネジ止めでした。
位置決めをしたキャリッジをブッシュホルダと接着します。エポキシを塗ったくってシャコ万で固定。
この時点で第三ミラーが傾いていたら話になりませんので、そっと動かしながらレーザを出してズレがないよう調整します。
結構ばらばらにしていますが別に何にも怖くありません。自分ですべてを設計した加工機ですから内容は完全にわかっています。この不思議な安心感がいいですね。
ここで新年二回目の雑煮でも食べて接着剤が固まるのを待ちます。
……雑煮を食べて来ました。 動かしてみましょう。
とりあえず相当力を入れてもほとんど回転方向のがたつきはありません。ブッシュを増やした効果は確実に出ております。
その後ベルト類を元通り取り付けて改造完了です。
動きをみてみます。
さて、結果は…..
劇的ではありませんが、確実に改善しています。Y軸を振ったときと同じレベルになったと思われます。
もともとの描画が、いわゆる一般的なプリンタに比べると残念な画質ですのでここまで出来れば良しとしましょう。
ところで、ストロークの変化ですが、
322mm → 321mm ということで予想通りほとんど変化無しで改造完了できました。
よかったよかった。
コメント