キーワード「ジャンク」の結果を見ていて発見したものです。
年代ものといった外見ですが、超音波アクチュエータなんてただのセラミックスですからよほどのことが無い限り壊れることなどありません。問題は回路ですが、高々数十kHzですから壊れててもなんとか作れるだろうと根拠の無い自信で入札しました。
案の定電源を入れても何も反応しません。パイロットランプは点灯するので通電はしているようです。AFCというつまみがついていますが、なんだか良くわかりません。何回転もします。AFCの上にはTUNINGというラベルがあるのですが、窓の中には何もありません。
ということで早速開けます。こんな感じですっかすかです。電源以外は発振回路とアンプのトランジスタというところですかね。
で、例のAFCはコイルのコアを抜き差しするためのつまみのようです。くるくる回すとだんだんと手前に出てきます。10回転以上、10mm以上動きます。周波数のコントロールのような気がします。AFCはAutomatic Frequency Controlというところでしょうか、いや手で回すのでAutomaticでは無いですね。相変わらずよくわかりません。
で、何も見えなかったTUNINGの上の窓ですが、奥に壊れたラジケータがついてました。
なるほど、どうやらAFCのつまみを回してラジケータの指示を見ながらTUNINGする、といった使い方のようです。
で、とりあえず手元にあった出所不明のラジケータを取り付けてもう一度動かしてみました。
電源を入れてフットスイッチを踏みAFCつまみを回していきましたが、やっぱり何の反応もありません。やはりだめかなあと思いながらもさらにつまみを回していくと、急にラジケータの針が振れました、それと同時にカッターを持つ手に違和感を感じました。なんと言うか、カッターの太さがちょっと太くなったような感じといえばいいでしょうか。そしてその感覚はフットスイッチから足を離すと消えます。これは動いているようです。ラジケータの針が無かったためTUNINGがうまく出来ていなかったようです。
ということで、とりあえずケース内の埃をコンプレッサの圧縮空気で吹き飛ばして一旦ケースを閉じ、カッターの先端に手元にあったアートナイフの替え刃を取り付けて動かしてみました。
ん?動きません。ラジケータも振れていません。
おかしいなと思ってもう一度AFCを回すと「バチン!」と音がしました。今度はラジケータが振れています。
その状態で試しに適当なプラスチックに刃を当ててみると、おおおおおおおお!切れます。すっと刃が入ります。動いています。すばらしい。
やったー!と思いながらしばらく遊んでいると再び「バチッ!」という音が。それと共に刃がふらふらになっています。
何がおきたんだろうと思いながら刃を外してみると、なんと、刃がバラバラになってました。
これは、と思い色々と実験してみました。刃の種類や取り付け方法や飛び出しの長さを変えてみるなど。 その結果以下のようなことがわかりました。
- 薄い刃は超音波のエネルギーで破壊されてしまう
- 刃の飛び出し長さを変えると(多分)共振点が変化し、再度AFCを調整する必要がある
- 加工対象の材質(おそらく硬さ)によってもAFCの再調整が必要
- TUNINGが合うと恐ろしいほどに良く切れる
私が使ったことがある超音波カッターは調整つまみなんかありませんでしたが、このカッターは古いもの(1983年製のようです)ですので理由は良くわかりませんが、アクチュエータから刃、そして加工相手までを含めた加工系全体でのチューニングが必要なようです。その代わり、チューニングが合うと恐ろしく切れます。私は今までに数台超音波カッターを使った事がありますが、そのどれよりも強力です。
すばらしい。これが2,000円とか。
ということで、動作は確認出来ましたのでオーバーホールをする事に。
どこで何に使われていたのかわかりませんが全体的に薄汚れており、コードは黄ばみ。フットスイッチは途中でケーブルが継ぎ足されています。
電源コードはこんな感じの汚さ。取替えです。
フットスイッチもひどい状態です。とりあえず分解します。
筐体の下側、
上面。ここを踏み込みます。汚い。
ということで、中性洗剤で洗い、それでも落ちない汚れはアルコールでふき取ります。
ぴかぴかになりました。
最後に切断の様子を動画で。ちょっと危なっかしいですがご勘弁を。
最初のもたもたしているところは超音波を切っています。途中から急に刃が切り込んでいきます。そこがフットスイッチを踏んでいるところです。わかるかな。
プラスチックを切っている感覚と、チーズを切っている感覚、それくらいの違いがあります。
コメント
≻加工対象の材質(おそらく硬さ)によってもAFCの再調整が必要
刃が粉々に破壊されると言う事は刃自体が振動子になっているのかな?
だから調整を上手くやっても材質が違ったり
刃の当て方とかを間違えると共振しなくなって
全然切れなくなったりするんじゃないかな?
その通りと考えております。
振動子の振動が刃に伝わってなんぼの道具ですから、刃先までの全体で、さらに言うと切り込んだ材の加工点近傍まで巻き込んだ共振状態が制御対象になるのでしょう
刃はイモネジで点で締め付けられていますので、そこを節とした強振動がねじ近傍に起きたのでしょう
実際に刃の当て方で全く切れなくなります
今の超音波カッターは自動制御されていますので気にする必要はないみたいですが