スパッタリング条件検討

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条件検討などとえらそうなことを言えるようなものではないですが、電極の形状や圧力、電圧などをいくつか変えてプラズマの状態を観察してみました。

まずは電極間隔を大きくして印加電圧を高くした例。

真空度が高いとプラズマが生成されやすくなり写真のように陰極全体がプラズマで包まれてしまいます。で、スパッタしたい基板の近く(写真の上部の円盤の下に基板がついています)にはまったくプラズマがありません。当然膜はつきません。

これを防いで対極との間にプラズマを閉じ込めるためには容器内の圧力を上げるとよいです。当たり前ですが圧力を上げると放電電圧が上がりますので、対極に近い電位勾配が大きなところだけしかプラズマができなくなります。
たとえばこんな感じ。

しかしながら、これをやると電極の酸化が激しくなります。
一般的なというかまともなスパッタであれば圧力調整はアルゴンか窒素でやるのですが、この実験の場合純ガスの設備なんてありませんから圧力調整は大気です。当然酸素が入ります、で酸化します。電極が酸化銅の膜で覆われると、銅のスパッタリングではなく酸化銅のスパッタリングになってしまいます。これは避けねばなりません。

ということで、容器内圧力を下げて酸化を出来るだけ防ぎつつ、電極間隔を狭くしてプラズマを基板に触れさせた例。容器内圧力を下げていますので陰極全体がプラズマに包まれていますが、基板もプラズマに触れています。この場合放電開始電圧は下がります。

こうしてしばらくプラズマ内に基板をおきますと、なにやら膜が出来ます。
大部分は酸化膜のようですが、一部には金属光沢が見られます。

ということで、さらに改造。
次は床面に銅板を置き、床面全体をターゲットにします。そしてその中央部、床面にぎりぎり触れないくらいの位置に対極兼基板保持の銅線を吊り下げます。

このような構造にすると床面全体がプラズマに包まれ、プラズマ化している体積というか領域が大きくなります。ここまでの印象では、どうも対極の位置や形状はあまり関係ないようです。

で、このプラズマの中に基板をどっぷりと沈めて待つこと10分ほど。

なにやら膜が出来ます。あいかわらず酸化も激しいようですが、中央部には金属光沢らしきものが。

基板が十分に冷えるのを待って取り出します。プラズマを消してすぐに大気を入れると膜は一瞬で酸化してしまいます。

基板をひっくり返すと…

おお! 銅の金属膜が出来ています。すばらしい!
面積は小さなものですが確かに銅がスパッタされています。

こんな感じに鏡面が出来ています。上の写真はピンボケに見えますが、よく見るとフォーカスが鏡面に反射した天井に合っているのがわかります。銅の鏡なので反射像もなんとなく赤っぽいですよね。

で、フォーカス位置を変えると、

こんな感じに下の文字が透けて見えます。銅の膜は緑っぽく見えます。銅の赤色の補色(白色から赤色を反射するので補色の緑が透過して来る)が見えているようです。これこそ目標にしているハーフミラーです。
この方向で検討を進めればうまくいきそうな気がしてきました。

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