スパッタリング手法完成

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この数ヶ月にわたり検討してきましたスパッタによるミラーつくり、その作製プロセスがほぼ完成しました。結局、円筒型ターゲットによる製膜はあきらめ、マグネトロンスパッタによる方法を選択しました。

ここしばらく紹介しておりましたように、円筒型でもかなりの高品質な膜が出来ます。再現性も良いです。しかしながらどうしても膜厚の点でもうひとつなのです。強い光にかざすと、うっすらと光源が透けて見えます。遠赤外でどうなのかというのは良くわからないのですが、少なくとも可視光では反射率100%とは言えない状況です。時間を稼げばそれなりに厚い膜が出来ていくのですが、製膜時間が延びるとリークによる酸化の問題が出てきます。リークはチャンバのセットの状態によって大きく変わり、手作りのチャンバではバッチごとのばらつきの影響がモロに出てきます。また、電流を増すことによって製膜レートを上げ、短時間で厚膜を得ることも出来ますが、今以上に電流を増やすとターゲットが熔け始めるのです。銅の融点は1100℃近くですから、これは大変な温度です。水冷機構を加えるのはひとつの手ですが非常に面倒な作業です。

ということで、マグネトロンスパッタです。
今まではマグネトロンを作ってもいまいちレートが上がらず、膜のムラもひどかったのですが、このたび導入した全波整流とコンデンサによる平滑回路の影響なのか、新たに作り直した基板ホルダの形状が良かったのか、まだはっきりしておりませんが、急に見違えるようにきれいな膜が出来るようになったのです。製膜速度は恐ろしく速く、したがって膜厚は十分、表面のムラや荒れもほとんどありません。
なぜこのようにきれいな膜が出来るようになったのかはちゃんと考察する必要がありますが、直感的には電源回りかなと考えています。これまでの実験でも”DC”マグネトロンスパッタ をやっているつもりでおりましたが、厳密には”半波脈流”マグネトロンスパッタでした。これが全波整流+平滑になったのは大きいのではないかと。
結果オーライという話もありますが、なぜうまく行くようになったのかきちんと突き止めたいと思います。

DCマグネトロンスパッタの一連のプロセスはそのほかの作業も含めて動画にまとめニコ動にアップしました。スパッタの部分だけを切り出した動画をここにおいてお盆休みの集大成としたいと思います。

 きれいなミラーを作る手順が完成しました。

こんな感じで使うことになります。

お盆休みの目標はレーザ発振でしたが、残念ながらそこまでは到達できませんでした。
しかしながら、ずっと取り組んできたスパッタリングによるミラーつくりが確立できましたので満足です。

コメント

  1. Unknown より:

    動画見ました。
    凄いですね。感動です。
    とても興味あります。

    アクリル板とかにも皮膜成型できますか?
    熱の影響は?

    • みら太/mirata より:

      nabekamadoさん、コメントありがとうございます。
      ニコ動にもコメントいただいた方かな…

      アクリル板へのスパッタは簡単ではありません。が、今度やってみますね。
      プラズマは簡単に言えば炎のようなもので、多くの場合かなりの高温です。よってプラスチックの基板を扱う場合はプラズマから少し離した所に置く必要があります。どんなレイアウトにすればよいかは検討しないといけません。
      が、世の中には有機EL(熱には弱い)の電極をスパッタで作るなどという研究もされていますので、不可能な話ではありません。
      やってみてブログで報告しますので少々お待ちください。
      ありがとうございました。