自作CO2レーザ加工機五号機(大) その10 ファーストライト

自作レーザ加工機

 

レーザ管のこていが終わりましたので、その他光学素子の実装に進みます。
ミラーについてはホルダに既製品を使いますのでセットするだけです。一方で、レンズは鏡筒を分解してしまったのでマウントを自作する必要があります。まずはそこからです。
レンズホルダにはホームセンターに売っているこのアルミLアングル切り落としを使います。30mm角3mmtのもので、おそらく一般に売ってるものでは一番小さいタイプだと思います。一つ100~150円くらい。
レンズもすでに準備しています。五号機には20mmφのものを使う予定です。参号機までは12mmφのものを使っていました。12mmの予備もありますが、五号機ではレンズが良く見える構造になっているので、20mmの方がレンズっぽいということで選択しました。
焦点距離も1.5、2、4インチをそろえています。一般的に使われているのは2 inchです。50mmと言われている奴です。まずはそれを使います。
ボール盤で30mm角の中に20mmφの丸穴を開けるのは難しいです、つかそもそもそんな錐を持っておりません。ので久々にCNCフライス盤を動かします。
まずはfusion360で中途半端に作っている組図にレンズホルダ部分を追記します。ビームのセンターだけはきっちり合わせておく必要がありますので。

 

で、ここからレンズホルダだけ抜いてCAMモードでGコード作ります。輪郭加工なのでぐるぐる回るだけです。すぐ済みます。
L材をべた置きして上から加工するには長いエンドミル、この場合チャックした状態で35mmくらいは足の長さがあるものが必要です。が、そんなものは持っておりません。のでこんな感じに木のブロックを置いて逆から加工していきます。木もL材も両面テープで固定しただけです。

 

CNCにセットして、fusion360で作ったGコードを読み込ませます。

 

センターを合わせて、

 

削ります。

 

何も考えずにGコード作ったらFが大きすぎました。エンドミルは1.3mmφのものを一本折ってしまいました。考えてみたら初めてだなエンドミル折るの。もっと派手にバキッとかいって折れるのかと思いきや、いつの間にか「あれ、先が無い」的な静かな折れ方でした(笑

 

ちょいとだけ動画で。

 

で、出来上がったのがこれです。このままだとレンズが穴を抜けて下に落っこちますので、下側には20mmφよりもやや小さな支え板を入れます。支え板はアクリルをレーザカッターで切り出す予定にしております。その支え板を取り付けるための穴もあけておきました。

 

穴サイズ確認のためにレンズを入れてみますと、ピッタリであります。

 

続いて、このレンズホルダをキャリッジに取り付けるための穴加工をします。

 

丸穴であればボール盤で開けますが、レンズホルダの左右位置を調整できるようにしておきたいので丸穴ではなくスロットを開けます。

 

開きました。

 

 

レンズを支える部材もサクッと切り出して、

 

 

組み立て。
なんかもうこういった別加工部材をねじ止めするときにねじ穴が合っているのが当たり前になってしまって何の感動もないですが、手作業でこれやったら大変ですよ。共穴開けるならともかく、ボール盤とフライス盤、ハンドドリルとかで別々に加工して組み合わせようものならねじ穴を合わせるだけで一苦労であります。4つの穴を正確な位置に開けるのは本来なかなか難しいことなんです。

 

これまた当たり前のようにキャリッジに取り付けます。事前に3DCADでモデリングしていますので間違いなく取り付けられるのです。

 

ではミラーを取り付けていきます。
第三ミラーと、

 

第一ミラーです。第二ミラーには以前サイズ確認のために取り付けたものがそのままになっています。

 

取り付けるのはこのMo(モリブデン)ミラーです。
このほかにガラスに金を蒸着したものも持っているのですが、なんとなく色がカッコええのでこのMoミラーを選択。おそらく金の方が反射率が高いんじゃないかと思いますが、その辺はいずれ調べたいと思います。

 

取り付けはホルダのリングを回して外してからミラーを入れ、ミラーを押すようにリングを再度ねじ止めすればOKです。

 

 

第三ミラーも入れたところでおおよその位置確認をしてみました。
スマホのフロントカメラを鏡筒下に突っ込んで上を見上げております。と、第三ミラーを介して第二ミラーのホルダが良く見えており、さらによく見ると第二ミラーに第一ミラーが映りこんでいます。で、さらによく見ると第一ミラーにはレーザ管の射出口が写っています。ということは、この光学系はこの状態でほぼ光軸が出ているということです。設計時点でミラーの位置があっていないと光軸調整が困難を極めますが、これは幸先が良いです。

 

ということで、レーザ管から第一、第二、第三ミラー、そしてレンズまでの光学系が全て実装されました。

 

ではいよいよ光軸合わせです。

 

 

光軸合わせはレーザ管の水平からスタートし、第一ミラーから第三ミラーに向かって進めていきます。

 

レーザ管のホルダにビニルチューブを切断した小片を挟んでリングを締めこんで固定します。

 

フロント側も同じように固定します。

 

レーザ管がぐらつかなくなったら、冷却水配管を行います。
チューブは工房のプロジェクタスクリーンにひっかけて巻き癖を解いておりました。使っているのはホームセンターに売っている燃料用のチューブです。これが低温時も硬くならないのでお勧めです。

 

このピンク色というか朱色というか、なんともしれない色のチューブです。

 

レーザ管に接続して、接続位置に力がかからないようにタイラップで仮止めします。

 

チューブはずずずーっと床を這わせて、

 

バケツに貯めた水の中にポンプを接続して落とし込みます。
こまかな、いや大事なこととして、冷却水は射出口側から入れて、全反射ミラー側から出します。レーザ管の構造を外からよく観察するとわかりますが、射出口側の電極はよく冷却されるように冷却水配管に接するように配置されているのに対して、全反射側はそれほど念入りに冷却されていません。これはDC動作させるレーザ管特有の構造だろうと考えております。
冷却されている方の電極は陰極、全反射ミラー側は陽極になっています。というか、理屈から考えてそうだろうと思って一号機を作った当時(2013年ですからもう7年も前です)私はそう接続してきました。DCでレーザ管を駆動するということは、レーザ管に立つプラズマ内の電流の流れは一方向です。よって、陰極には陽イオンが、陽極には電子が衝突します。この時陽イオンと電子では重さが数千倍違いますので、運動エネルギーも数千倍違います。そのため陽イオンが衝突する陰極側は陽イオンの大きな運動エネルギーの開放によって温度が大きく上昇します。この陽極側とは桁が違う陰極での発生熱を一生懸命冷やしてやるために陰極側の冷却は念入りです。この考えはえらい人に確認したわけではないんですが、おそらく合っているんじゃないかなあ。実際DC駆動のレーザ管はみなこの構造と電極配置になっていますから….
ということで、冷却水はまず陰極を冷やし、それから管全体を冷やすように接続しましょう。
お次は電源です。これも参号機で使っていたものをそのまま使います。

 

接続はこんな

 

バラスト抵抗と電流計。
私はこのバラスト抵抗の要否、および挿入位置が実はよくわかってないのです。
まず要否ですが、おそらく要りません。今使われているレーザ管電源のほとんどは定電流電源になっており、いわゆる安定器としての抵抗は不要になっているはずです。次に位置です。これも本来は陽極側に入れるべきなんだろうと思っております。なぜなら、レーザ管が放電を開始すると同時に管の抵抗は大きく低下しますので、電位差は抵抗の両端に集中します。つまり、配線が適当な陰極側にGND(FG)に対して高電圧が発生するということです。これは安全性の面で問題があると思われます。(定電流電源であることはおいといて)いわゆるバラスト作用という意味では回路のどこにあってもいいのだろうと思いますが、電位差が発生するという点で問題があると思うのです。実際たまにびりびりすることがあります(笑 いや笑い事ではないです。管に流れている電流は大きくはないので、漏電するとその分電源に電流が戻らないわけですから、定電流源としては電圧を上げて電流を増やさざるを得ないわけです。それによってもし漏電電流が増加するようなことが起きると、電源はますます電流増大側に制御をするわけで、これは非常に危険です。
そんなこんなで、おそらくこの抵抗はいりません。
が、なんとなく電源が壊れそうで入れちゃってるんですよね。中華レーザ加工機の 陰 極 側 にも抵抗入ってますしね。どうなんでしょうねこれ。
どなたかご存知の方いらっしゃいませんか?
ちなみに、電流計はGND側に入れていますので安全上はほとんど問題ありません。なんならここにLEDを直列に繋いでも大丈夫です。数十mAなのできれいに光ると思います(笑

 

ということで、ようやくこれでレーザ管を通電できる準備が整いました。光軸調整の始まりです。
まず第一ミラーとレーザ管の位置関係を調整します。第一ミラー、第二ミラーには光軸を出すための便利なガイド板がついています。ここに適当な紙片をクリップで止めます。この紙片にレーザ光を弱く当て、焦げがど真ん中になるように調整していくことになります。
まず何も考えずに一発。を?そんなにずれてないですね。中心やや右上なので、第一ミラーのマウントネジを緩めてスロット穴をガイドにミラーをやや奥(写真では右側)に動かします。次いで、後部レーザ管ホルダの固定ネジを緩めて、これもスロット穴をガイドに若干お尻を持ち上げてやります。
で、再度撃ってみますと、ほぼ真ん中に来ています。第一ミラーとレーザの位置関係はここから動くことはありませんので、レーザ管がフレームのYXZ直交軸に対して大きく曲がってない限りはこの状態までもっていけば終わりです。簡単。

 

お次、第二ミラー。この辺から光軸合わせの醍醐味が(笑
まず第二ミラーと第一ミラーを思いっきり近づけます。で上から見てミラー位置に矛盾がなさそうであることを確認します。

 

直角定規当てたりしてますが、こんなんじゃ合いません(笑 おまじないみたいなもんです。

 

まず、この状態で粗く光軸を合わせるために、第二ミラーのガイドに先ほどと同じように紙片を挟みます。

 

この状態で紙片の真ん中にビームが来るように第一ミラーを調整します。

 

次に第二ミラーを一番離れた位置にもっていきます。ここでレーザを撃つとどこに飛ぶかわからないので、写真のような木片を使って第一ミラー直近からレーザを撃ちながら少しずつ離していってビームがどの位置に向いているかをおおよそ把握します。このあたりが不可視光を扱う面白さであります。
で、改めてビームの向きが第二ミラーの位置になるように第一ミラーの傾きを調整します。
この時に光軸がぴったり合っていれば下の写真のように、二つのミラーを近づけて作ったときのスポットと、話したときのスポットがぴったり重なります。
実際は第二ミラーを離すと第一ミラーの角度調整がより微妙になりますのでなかなかぴったりというわけにはいきません。ミラーを近づけたり離したりしながら数回調整します。
これをいくら繰り返してもスポットが重ならないときは(この場合)Y軸とビームの平行がとれていません。ので第二ミラーの左右位置(レーザ管に平行な方向)を調整します。第一ミラーの左右位置を調整しても同じことができますが、そうすると第一ミラーとレーザ管の位置関係の調整からやり直しになりますのでご注意を。
なお、この時「左右は合うが上下が合わない」場合には第二ミラーと第一ミラーの高さが違っています。第二ミラーの高さを変更して合わせるようにします。

 

光軸があったところの写真を載せておきます。
まずミラーを一番話しておいて、

 

この中央になるように光軸を調整しましたので、ここに一発

 

レーザを撃ちます。

 

この状態で紙片を動かさないようにして、第一ミラーの直近まで第二ミラーを動かします。

 

で、ここで改めてもう一発レーザを撃ちます。
こんな風に見事に一点に重なっていれば第一/第二ミラーの調整は終わりです。

 

お次は第二/第三ミラー間の調整です。第三ミラーにはガイドがありませんので、こんな感じにマスキングテープを貼って目印にします。

 

同じようにレーザを撃ちながらスポット位置を見ていきます。
この時第一ミラーと第二ミラーは離れた位置にしておいた方が良いでしょう。光軸は離れるほどずれがよくわかります。

 

(この間しばしの努力)
…..頑張ってみましたが、どうやっても左右が合いません。このように近づけたときと話した時でスポットがずれます。第三ミラーを最も話した状態にして中央に合わせた(右のスポット)時、ミラーを近づけてからレーザを撃つと左側にずれています。つまりこれはキャリッジがX軸に平行な光軸よりも外側にずれているということを意味しています。
よって、これを解消するためには第三ミラーが乗ったキャリッジを軸に近づけるか、第二ミラーを軸から離すかしなければなりません。
設計上キャリッジはこれ以上軸には近づけられません。アクリル板を薄くしていけば位置調整は可能ですが、下の写真を見る限り3mmくらい動かさないといけないようです。これだとキャリッジを支えるアクリル板が薄くなりすぎます。

 

ということで、やむなく調整が済んだ第二ミラーを軸から離すことにします。
第二ミラーがベースに固定されているこのネジを、

 

一旦外して、

 

ワッシャを3枚入れて後ろにずらします。
当然第二ミラーの位置が変わりますのでもう一度調整をやり直します。
この間割愛。

 

 

改めて第三ミラーの調整に戻ります。

 

一旦外したために派手にずれた第二ミラーの軸を元にもどして、

 

スポットが真ん中に来たら、第三ミラーを第二ミラーに近づけて、

 

もう一発撃ちます。ほぼ重なっていますのでいいでしょう。
最後は第三ミラーの調整です。

 

レンズホルダの上に置いた紙の、

 

真ん中にスポットができるように調整します。

 

まあいいでしょう。第一/第二/第三ミラーの調整があっていればキャリッジの位置によってこのスポットがずれることはありません。
今回第三ミラーの鏡筒を分解してレンズを裸にした理由の一つはこれがやりたかったからでした。

 

これで光軸調整は終わりです。いずれ設置して本格投入するときにはもっとガチで合わせるつもりです。
ではではいよいよファーストライトです。
これまで何度もやってきましたが、レーザ加工機作ってて一番盛り上がるのはやっぱここなんですよねえ。動画でどうぞ。
2021/01/17 動画のファイルを間違えておりました。
修正いたします。以下はマニュアルでレーザを撃ちつつパターンを描かせています。
 
まだレーザ管と制御系の連携が取れていないのでレーザONはマニュアルですが、軸の動作は完璧ですね。素晴らしいです。

 

 

次は Smoothieboard とレーザ電源を連携させてLASERWEB4からのカットとマーキング動作の確認を行います。

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