スパッタリング条件検討 続き

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 考えるヒントを得るためにいろいろと実験。

まずは銅板を丸く切り抜いて、

こんな感じにしてみました。

対極に一番近いのが銅版を取り付けているナットであるのが少し心配。

で、通電してみました。

なんか天使のわっかみたいなプラズマがカコイイ。
以下何枚か。

プラズマはまことに安定しているのですが、ほとんど成膜されず。

もう少し銅版を小さくしてみました。あんま関係ないと思うけど。

やはり成膜せず。

ここで、秘密兵器の高圧プローブで印加電圧を測ってみました。….300Vしかかかってませんでした。
これじゃだめだろうと思った次第。もっと早く測ればよかったです。

スパッタリングは文字通りスパッタ現象に基づく成膜ですので、スパッタが起きないと膜は出来ません。んで、スパッタはこの実験系の場合プラズマ中の窒素イオンが電界で加速され、銅のターゲットに勢いよく衝突して銅のクラスタをはじき出すことで生じます。つまり窒素イオンがしっかり加速されないとだめ、そしてそのためには電界をもっと強くしないとだめ、ということのようです。
おそらくスパッタ現象には窒素イオンの運動エネルギーの閾値があるはずで、今の条件ではその閾値を越えているイオンがほとんどないのだと思います。窒素イオンはターゲットにぶつかってターゲットを暖めているだけのようです。

さてさて、電源系にはまだまだ十分余裕があります。スライダックは1/3もまわしてないくらいです。よってまだまだ電圧を上げることは可能です。
しかしながら問題が。電圧を上げすぎるとターゲットが熱くなりすぎて酸化してしまうのです。普通のスパッタ装置にはターゲットの冷却系が入っていますが、私の手作りなんちゃってスパッタにはもちろんそんなものはありません。せめてもう少しちゃんとした真空系か、あるいはアルゴンを流すような系であれば酸素の影響をもっと低減できるのだと思いますが、私の真空ポンプでは限界があります。

ひとつの案としては、このときにある程度の膜を作ることが出来たようにターゲットをチャンバの底に敷いて放熱させながら使うことです。こうすればターゲットはあまり熱くなりませんのでそれなりに電圧を上げることが出来ます。しかししかしこれにも問題が。
このような構造をとるとチャンバの床面全面がプラズマの海になりますのでこんどはチャンバの壁が異常に熱くなるのです。外側が80℃くらいまですぐに上がります。

どうしよう、、、
と、しばし考えた結果、やってみたのがこれ。
床がプラズマの海にならないようにパッキンを大きくしてみました。今までのパッキンの内側にドーナツ型のシリコンゴムを追加したのです。端っこのほうに隙間がありますが、ちょっとだけですので、基本的にパッキンがターゲットと密着している限り、対極から見ると絶縁被服の向こう側になって大きな放電は起こらないはずです。

こんな感じの構造。対極は前の実験のターゲットをそのまま利用。

で、やってみますと、おおおおおお、いい感じです。
基板はパッキンに乗せてます。

横から見るとこんな感じ。プラズマはターゲットが露出しているところだけに集中しています。
これまでよりも電圧を上げていますが、チャンバの壁面もそんなには熱くなっていません。

 で、基板を取り出してみると、

おお! なんかそれなりのものが。薄いですが酸化もしておらずきれいな膜です。

確信しました。この方向です。
ただ、まだ電圧が足らないようです。成膜速度が遅すぎます。20分くらいやってこの程度です。

 ということで、力を得てよりよい条件を探して実験を繰り返していましたところ、だんだんと追加したパッキンが反ってきてプラズマが広がり始めました。同時にチャンバの壁がどんどん熱くなります。これはまずい。

むむむむ、、、
これは抜本的な対策をする必要があるようです。

多分考え方は間違ってません。電圧を上げる方向です。….ということはチャンバの耐熱性をあげるほかなさそうです。残念ながらここまでがんばってくれたアクリルのチャンバはお役御免とするほかなさそうです。熱に強いチャンバをつくらなくては。

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