ガス冷却ペルチェ方式霧箱 その29 ガス充填

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ガス冷却ペルチェ方式霧箱の投稿も29まで来ました。ようやくガスの充填と冷却テストであります。
なお、今回のテストは残念ながら失敗に終わりました。が、何らか後々の参考になるかもしれませんのでまとめておきます。

まず冷却部をきちんと仕上げてしまいます。

ラジエターを支えている寸切りネジがフレームサイズから飛び出しておりますので、まずそれを切り落として、

フレアナットの接続部をきっちり締め付けていきます。

この時コンプレッサ側のナットの締め込みがなんかまっすぐになってないなというのが気になりましたが、とりあえず適当に締めこんで終わりにしました。
なんとなく違和感があったんですが、まあいいかと。
ここは案の定あとで問題になります(笑

ガス枕下はキャピラリと低圧側のガス出口の二か所を締め付けます。ここはしっかりと締まり切った手ごたえがありました。

ガス枕はパイプによって中空に保持されています。結構しっかりしていますね。

低圧側のパイプは6mmφあります。

ガス配管周りはこれで良し。

次はコンプレッサの電源です。
切れたままプラプラしている線を繋ぎます。コンプレッサは三相交流モータですので、進角コンデンサが外付けされています。

ギボシで少し延長して、

この端子台を使って引き出しを作ります。

Y端子つけて、

端子台は二極あればよいのでばらして適切な長さのネジを使って組み直します。

適当にベース板にねじ止めして終わり。

冷却時には、ガス枕の周りに発泡ポリエチレンで作ったこの断熱材を取り付けて、

3Dプリンタで作ったこの枠を、

こんな感じに使って天板に固定するつもりです。

 
さて、これですべての準備が整いました。いよいよガス入れです。

ガス入れをする際は、
 ①配管内の空気を抜いて大気とそれに含まれる水蒸気を除去する
 ②空気を抜く際に出てくると思われるコンプレッサオイルをトラップする
 ③真空に引いた配管内にオイルを戻す
 ④フロンガスを充填する
という手順を踏む必要があります。
真空引きおよびガス入れはすべてラジエター出口のキャピラリ分岐部分に取り付けたサービスポートから行います。
ここは高圧部分になりますので、うまくガスが入るのかやや心配ではあるのですが、分解前の除湿器の封止されたサービスポートもこの位置についていましたので大丈夫ではないかと考えております。この辺はやってみるしかないのであります。

久しぶりに登場する真空ポンプのほか、必要な配管系を組んでいきます。
毎度汚いですが、構成は以下の通り。
Aはサービスポート、B,D,Eは開閉バルブ、Cはフロンガス缶へのピアシングを兼ねた開閉バルブ、Xはガス圧計、Yは真空計です。

上記図で手順を説明します。
まず、バルブA,B,Dを開けた状態で真空ポンプを動作させます。するとラジエターとそれに続く冷却系内とフロンガスボンベまでの配管の空気が抜かれていきます。それと同時に冷却系内に充填されているオイルが吸い出されてきます。オイルはバルブDを通ってトラップに溜まります。
十分に真空に引いた状態で真空ポンプを停止し、バルブBを閉め、バルブEを徐々に開きますと、大気が吸い込まれてトラップ内の圧力が上がり、吸い出されていたオイルが冷却系に押し戻されます。オイルがほぼ戻ったらバルブEを閉めます。
次にバルブDを閉め真空ポンプを系から切り離し、Cのハンドルを締めこんでフロンガスボンベに穴を開けます。ハンドルを緩めるとフロンガスが出てきてバルブBまでの配管がフロンガスで満たされます。
この状態でバルブBを徐々に開けていくとフロンガスが冷却系の中に充填されるという流れです。

上記を想定して配管を組んでいきます。ワンタッチジョイントとウレタンホースが活躍します。

真空系まで繋いだところで冷却系の配管の気密性を確認します。ここがしっかりしていないとガスを充てんした時に漏れ漏れになってしまいます。

ジャム瓶で作ったオイルトラップ。ガラス瓶の底に穴を開け、ウレタンチューブを突っ込んでエポキシで固めています。ここから吸い出されたオイルが出てきて瓶の中に溜まります。廃棄は上部の蓋に取り付けたチューブから行われますので、これ以上先にオイルが吸い出されていくことはありません。

この状態で冷却系を真空引きし、真空度が維持されれば気密は保たれていると判断できます。

では引いてみましょう、動画でどうぞ。

えー、明らかにどっか漏れてますね。真空度がこれ以上上がりません。これは対策が必要です。

真空ポンプ止めて、どれくらい漏れがあるのか見てみます。


いやこれはひどいですね。ということで、どこが漏れているかを探していきます。
まずサービスポート以降の配管を調べます。サービスポートから配管を外して、その先端にガラス板を押し当てた状態で真空引きして漏れを調べます。

 これも動画でどうぞ。


こちらには漏れがないことがはっきりわかりますね。
真空ポンプを切っても真空計は全く微動だにしません。
ちなみに、放置して30分後。全く圧は上がっていません。
ということで、冷却系側に漏れがあるということで確定です。

となると、例のフレアジョイントの部分が非常に怪しいです。
ということでまずはそこを増し締めしてみました…..と、ナットがジョイントを舐めてしまいました。あらら。これではだめですね。

この後ジョイントを変えてみたり配管がぴったりジョイントに接するようにパイプを曲げ直してみたり、さんざんいろいろやったんですが、どうしてもフレアナットがジョイントのネジ山を舐めてしまいます。
さすがに「これはナット側に問題があるのではないか」と思いましたが、ナットはフレア加工したチューブから外すことはできません。
もう一通り同じような検討をしましたが、やはりだめです。この間3時間くらい。

で、最終的にナットを外すことを決断し、フレア加工したチューブの先端をパイプカッターで切断して問題があるフレアナットを取り外しました。

そしてしっかり状況が分かる状態でジョイントとの勘合を調べてみましたところ、

動画でどうぞ。

いやいやこれはいかんでしょ。全然ねじになってないですよ。
手持ちのほかのナットはしっかり勘合するのですが、このナットだけは全くダメです。目視で寸法が違うようには見えないんですが、押し付けてぐりぐりやるだけで回さなくてもどんどんジョイントにかみ込んでいきます。
明らかにこのナットがフレアを締め付け切れていなかったのが漏れの原因です。

ということで、しっかりと締め付けが効くナットを選んで再度切断部分にフレア加工を施し、再配管を行いました。

今回はぐっと締めこんで「これ以上締まらない」ポイントがしっかりわかります。やっぱねじ絞めはこうじゃないと(笑

ということで気を取り直して再度気密の確認テストです。

おおお、今度はちゃんとポンプの能力限界付近までしっかり引きます。

ポンプ切って様子を見ます。

10分後。

30分後。まずまず問題なさそうです。

全くこのジョイントには泣かされました。が、これで解決であります。

では改めてフロンガス側の配管を接続していきます。
今回充填するフロンガスは、除湿器に使われていた134aです。カーエアコンでおなじみ。

ここで残念なお知らせが。
ここですったもんだして抜いたガスはすっかり抜けてしまい、ボンベは空になってしまってました。やっぱり一度穴の開いた缶はどんなにバルブで閉めていても少量ずつ漏れているんですね。残念ですが仕方ありません。さんざん駆けずり回って空き缶入手したのに。

ということで、新品を使います。

充填量を調べる圧力計。青いツマミが上で説明した図のバルブB。

ピアシングバルブ。図のバルブCがこれです。

ではいよいよ充填です。

改めて真空引きしてオイルを吸い出し、それを戻す手順を踏みます。
で、フロンガス缶に穴を開け、バルブBを空けて冷却系に充填していきます。
このあたり両手がふさがっていましたので写真も動画もないのですが、充填自体はあっさりと終わりました。ボンベを逆さに持ち、バルブBを開けると数秒で液体状態のガスが冷却系内に吸い込まれていきました。

以外にもあっさり終わった充填にやや拍子抜けしましたが、ボンベを振っても液体は残っていません。200g缶のほぼ全量が充填されたようです。
サービスポートからホースを外し、冷却系からのガス漏れを調べます。
少なくともシューシュー漏れるような個所はありません。微量には漏れているかもしれませんが、とりあえずテストをするには十分でしょう。
サービスバルブのへそをちょっと押してみると、すごい勢いでフロンガスとオイルが噴出してきます。充填はしっかり行われているようです。

ということで、ドキドキしながらコンプレッサを回しました。

が、冒頭に書きましたように結果は失敗でした。ラジエータまでの配管は熱くなるのですが、ガス枕はほとんど冷えている感じがしません。数分回してみましたが何も状況は変わらずでした。
ということで、残念ながらキャピラリが詰まったと思われます。
まあ、バーナーであぶって酸化膜ができていたでしょうし、オイルを吸い出して戻す際にゴミも入ったと思われます。
元より一回でうまく行くとは思っておりません。リベンジですリベンジ。
とりあえずガス入れができることはわかりましたので作戦を練ってやり直したいと思います。対策はすでに考えており、必要な部材は発注済みです。次回はうまく行くはずです。
このあたりからが自作の醍醐味。ほんとにおもしろいところなんですよ。

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