ガス冷却ペルチェ方式霧箱 その18 ガス抜きと冷却ユニットの分解

その他のプロジェクト

正月のうちにやろうと思っていたガス抜きと冷却ユニットの分解をようやく行いました。
まず現状。冷却ユニットだけを取り出した状態です。

構成と分解指針をざっと予習してみます。この通りに行くわけでもないでしょうけど、パイプのどこを切断するかはある程度以降の目論見を持ってないと残念な事態を招きますからね。

コンプレッサ。フロンガスの圧縮を行う最重要パーツです。AC100V駆動で、写真手前に見えている四角の進角コンデンサで疑似的に三相交流を使って回す誘導モーターが入っている者と思われます。

以下割り箸でポイントを指しながら説明しますね。
ここが圧縮されたガスの出口。引き回しのチューブ径は4mmφです。

コンプレッサを出た圧縮ガスはラジエータに向かいますが、途中にこの三叉路があり、三叉路を直進するとラジエータが、左に曲がると電磁弁があります。
まずは直進。

圧縮ガスは上部からラジエータに入ります。

ラジエータ全景。ラジエータは空冷で冷却されており、圧縮ガスはここで冷やされて液化します。液化すると下に溜まりますので気体を上部から入れ、下部から液化したガス(液化したガスというのは変な言い方ですがこのままいきます)を取り出す構造になっているものと思われます。

ここから液化ガスが出てきます。この部分ちょいと複雑な構造になっています。
というのも、製造時のガス入れのための引き出し管とキャピラリがあるためです。立ち上がってから左に回り込んでいる管(途中が潰されています)が引き出し管。キャピラリーは奥側にあるのでこの写真では見えません。

この太いのがガス入れのための引き出し管です。

ガス漏れが無いように途中を潰したうえで先端をロウ付けしてあります。

裏側から引き出されたキャピラリ。おそらく1.2mくらいはあると思われます。巻き取られています。径は2mmφ。内径は不明ですが、1mmφかそれ以下のはずです。ここの配管抵抗でラジエータ部分の圧が上がり、空冷による冷却と相まって液化が進みます。
正常動作時はこの中は気体ではなく液化したガスのみが流れるはずです。

キャピラリーはエバポレータ下部に接続されています。ここからが膨張プロセスです。
膨張により温度が下がり、結露が発生するためにこの接続部分も断熱のためのゴム状の素材がまとわりついてました。黒いのはその跡です。

エバポレータ全体。液化したガスはエバポレータ内部で蒸発気化し、気化熱と膨張熱が奪われることにより温度が低下します。冷却動作の肝の部分です。エバポレータの中は気化したガス(?)と液体状態のガス(??)の混合物である湿り蒸気状態になっており、エバポレータ上部に向かうに従い、気化が進んでガス比率が上がっていきます。

膨張プロセスを経て気化したガスはエバポレータ上部から出てきます。というかコンプレッサによって吸い出されてきます。

エバポレータを出たガスはグネグネ曲がったこの管を通ってコンプレッサに戻ります。
この部分はできるだけ抵抗低く大量のガスを回収して次の圧縮プロセスに回さないといけませんので管径は6mmφと太くなっています。また、湿り蒸気がのこってこのパイプの中でも蒸発が生じる場合があるため結露防止のための断熱材がしっかり巻かれております。

で回収されたガスはコンプレッサ下部のここから引き込まれ、再び次の圧縮プロセスに供されます。以上が冷却サイクルの一行程です。

で、途中で置いていったこの電磁弁部分です。この電磁弁はラジエータ入り口と、エバポレータ入り口を繋いでおり、この間を開閉して流路を制御しています。

こちらが出口配管。エバポレータ入り口(上で説明した断熱材で黒くなっていたところ)につながっています。
このバルブは動作検証の時には全く動作しなかったので、確証はありませんが、挿入位置から考えていわゆるホットガスバイパス弁だと思われます。ホットガスバイパス弁は低負荷時の動作調整に用いられるものらしいです。(受け売り:笑)
ガス冷却ペルチェ方式霧箱ではペルチェ素子に思い切り電流流しますので、冷却ユニットは常に高負荷状態で運転されます。よってこのバルブは不要であると考えています。

以上がざっとした構成の説明でした。

ではいよいよガス抜きです。
どこから抜くかをしばし考えて、このラジエータ出口にある、

製造時に冷媒を入れるための、この枝管に穴を開けることにしました。最終的に捨てるところですので穴開けてもダメージゼロです。

ガス抜きに使う部材類を取り出してきます。

なんといってもポイントはこのチューブピアシングバルブ。配管に抱きついて針をねじ込んで穴を開け、気密を保った状態でのガス抜きを可能にします。

二つに割るとこんなになっています。右側のユニットの緑のOリングの奥から針が出てきます。

こんな感じに抱きつかせることになります。配管にはOリングが密着するので穴周りの気密は保たれることになっています。設計上は(笑

抱きつきの機構部分には、様々な管径に対応できるように二つのシムがついています。

この部分の配管は6mmですが、シムは二枚とも使いました。
3本のネジを使ってがっちりと固定します。

大丈夫かな。
この状態でバルブの上部に見えるイモネジ風の六角穴にレンチ突っ込んで回すと針がチューブに向かっていくという動作です。

ホース繋いでいきます。

チューブピアシングバルブ部分の接続。

これを圧力計兼バルブに繋いで、

このフロン空缶を繋ぎ込んで、この空缶にフロンを回収するわけです。

缶のアタッチメントにもチューブピアシング風の針付きバルブがついています。
この針は、新品のフロンガス缶を開封するときに使うものです。今回は空缶ですのですでに穴が開いています。

跡はこのチューブを、

圧力計に繋げば終わりですが、このままではちょっと困ったことが起きます。
今の状態ではチューブピアシングバルブから空缶までの流路に大気があります。このままでは空缶内に空気とフロンガスが混在することになるかもしれません。
まあ、分圧を考えるとほとんど無視してもいいレベルと思いますが、ここは無駄なこだわりを発揮してみたいと思います。ガス充填時にも同じことやらないといけませんのでその練習です。

どうやるかというと、こんな風に配管の途中にチーズを入れて分岐部分に真空ポンプを繋いでそこから流路内の空気を抜くのです。

そのためにはこの部分を接続するジョイントを作る必要がありますね。

真空ポンプは、CO2レーザ管を自作するときやスパッタ実験をするときに使っていたこれを使います。

接続用の部材はすでに腐るほど持っています。

6mmφならこの辺が使えるでしょう。

ではジョイント部分を作っていきます。が、ここで問題があります。外径6mmφの銅パイプというのが我が家の近くのホームセンターには売っていないのです。8mmφは見つけることができたのですが、それだと太すぎてフレアジョイントに入りません。

ということで、外径6mmφのアルミパイプを使ってみることにしました。
フレア加工ができるかどうかわかりませんが、やってみる価値はあります。というかは丘に手段が無いのです。

パイプカッターで、

あっさり切断。

フレアツールで、

恐る恐る加工してみました。

あら、あっさりできた模様。

接触面は実にきれいです。裂けてしまうのではないかと危惧していましたが、なんてことなくできました。なんでもやってみるもんですね。

接続も完璧であります。

ジョイント化します。
 フ レ ア ナ ッ ト を 入 れ る の を 忘 れ ず に

完成。今回はマジでナット入れるの忘れていません。人間進歩するものです(笑

真空ポンプのと接続部分のパイプも加工します。こちらは一方をワンタッチジョイントに差し込むのでフレア加工は片方だけです。

接続しました。全く問題なしです。

真空ポンプを、

接続します。

この状態で、

減圧し、しばらく放置して圧がそれほど戻らないことを確認します。
多少の漏れは覚悟の上です。これだけ接続箇所が多いと漏れはあるはずです。が、ガス抜きをするレベルなら問題は無かろうと判断しました。

この状態で空缶の重量計ろうと思ったんですが、ホースがあると正確に計れません。測れるわけないか(笑
とりあえずからの状態で重さ計って風袋抜いておきました。

コンプレッサを回しながらガスを抜いたほうが効率がいいはずですので、準備しておきます。

さらに、バケツというか、このビッグサイトにも持って行った(笑)ゴミ箱を持ってきて、

この氷を放り込んだ

氷水を作って、そこに空缶を沈めることで低温にすることでガスの液化を図り、回収効率をさらに上げる作戦をとります。

ここから数分の核心部分の写真はありません(笑 すみません。必死だったもので。
やったことは、

  • 真空ポンプ回して配管の空気抜く。
  • 真空ポンプ止めてチューブピアシングバルブの針をねじ込む
     →ここで陰圧状態から陽圧状態になるので穴が開いたことがわかる
  • コンプレッサ起動する。
  • 様子を見ながら数分間運転を続ける
  • コンプレッサの動作音がどんどん小さくなっていって負荷が下がっているらしいことがわかる
  • 3分くらいそのまま放置後、締められるバルブを全部閉じてコンプレッサを切る

というものでした。この間ラジエータは全く熱くならず、エバポレータは全く冷たくならなかったので、ガスは初期段階でほとんど抜けていたものと思われます。

空缶の中はちゃぷちゃぷと液化したフロンガスが溜まっています。
ええ感じで回収できたのではないでしょうか。

さて、ガスが抜ければもうなんでもできます。
早速分解していきます。

圧縮側の4mmφを切断します。

一撃。ガスが抜けてなくて「バシュー!」とかなるかもと恐る恐るやりましたが、完全に抜けてました。

使わないバイパスバルブ周りの配管も切断します。

まずラジエータが外れました。

エバポレータも出口側の6mmφ配管を適当なところで切断します。

外れました。

コンプレッサ単体になりました。この状態で動かしてみたい誘惑に駆られますがやめておきます。おそらく潤滑油が噴出してきます。

ラジエータを扱いやすく処理します。
まずバイパス弁の配管をできるだけまっすぐに伸ばして、鋸で切断します。この長さではパイプカッターが噛みつけないのです。

切れました。

鋸で切ったので切り口が汚いです。直管になるようにもう一度形を整えて、

この部分を最短距離で再切断します。

今度はパイプカッターが使えます。きれいに切れました。

ほかの切断部分も整形していきます。

できるだけまっすぐにすることで、

この後の接続が楽になります。

切断。

きれいに分離できました。

エバポレータ側も同じように整形します。ただし、キャピラリーの接続部分はそのままにしておきます。流用できるならそうしたいのです。

さて、これでまた山を一つ越えました。
次のステップは冷却系の組み直しです。切削で作ったガス枕を加えて配管のやり直しです。
ラジエータの冷却には、このシロッコファンを使う予定。

これらをどう組み上げるかも考えないといけませんね。

ということで、ガス抜きは思ったよりあっさり終わりました。
引き続き良いものを目指して頑張っていきたいと思います。

コメント