自作CO2レーザ情報 その2

 
さて、ミラー作製のためのスパッタリング検討も一段落つき、本格的にレーザ管の検討に入る事になります。
これに先立ち、自作レーザ関連情報の総本山であるSam’s LASER FAQ に再度ざっと目を通しました。膨大な情報には圧倒されるばかりです。
いずれCO2レーザのところだけでも全訳して紹介したいと思っているのですが、まだオーナーである Samuel M. Goldwasser 氏に許諾を得ておりません。つかまだ連絡取ってません。
ということで、ここでは今のみら太の関心事に絞って要点を抜き出したいと思います。

まずSam’s LASER FAQの引用の中でも非常に良くまとめられた論文の形になっているコロラド大学のDavid.Knapp氏の報告から。

  • HeはCO2/N2に比べて6倍の放熱効果(熱運搬効率)がある。したがって、出力が飽和するまでに流せる電流を増やす事が出来、結果的にレーザ管体積あたりの出力を高めることが出来る。
  • H2OもHeには劣るが熱の運搬効果が期待できる。
  • またH2Oは放電によってCO2が分解して生成されるCOとOの再結合触媒としても作用する。
  • が、H2Oの添加が過剰になると、触媒効果は無くなり、さらにCO2の励起状態分子数の分布状態に悪影響をもたらす。
  • 最適なH2O量はボア径によって決まる。
  • Xeも熱運搬、CO2分解防止に効果がある。
  • カソード電極はCO2が分解して生成される原子状Oのアタックによる厳しい酸化環境にさらされる。
  • CO2分解により生成されるCOは電極材と反応して揮発性のカルボニル化合物となり、このガスは光学系に付着する事により強いIR吸収を持つ汚染膜を形成する。
  • レーザ管のガス(He/CO2/N2混合)圧は20-32torr(2.63-4.21kPa)で動作させる。
  • 陽極酸化で黒色膜を形成したアルミニウムは良いIR吸収材として使え、熱電対と組み合わせたパワーメータとして使うことが出来る。

Home-Built Carbon Dioxide (CO2) Laser から。ここは非常に豊富な情報からなる総論の他、すでにCO2レーザを自作した方の経験談、Tips、アドバイス等からなるCO2レーザ自作を志す人必読のバイブルです。
気になるところを拾っていますので情報の連続性はありませんが、参考にはなるかと。

  • CO2の出力波長10.6umは可視光より非常に長波であり、コリメートはより難しくなる。
  • ミラーには金を使うと良い。銅は酸化の問題がある。
  • 全反射ミラーに適切な曲率の凹面鏡を使うとレーザの横モードをTEM00に固定出来る。
  • 凹面鏡の曲率は、レーザ管の光共振器長の倍以上の長さの焦点距離を持つものを選択すること。(凹面鏡は焦点距離の2倍の長さが曲率中心になります。曲率半径5mの凹面鏡の焦点距離は2.5m、このミラーは1.25m以下の光共振器長を持つレーザ管に使う事が出来る。ミラーの曲率については光共振器準備 理論編でも触れています。
  • レーザ管の要求真空度は10-100torr程度。(高真空ではありません。冷蔵庫を分解して作る真空ポンプで十分ドライブできるといった議論があとに続いています。)
  • 安定したプラズマを作るには100kΩ異常のバラスト抵抗を入れると良い。
  • 15kVのトランスでドライブできるレーザ管の長さは0.8m程度まで。
  • 適切な冷却構造を作れば、レーザ管の内壁温度は冷却水温度+20℃程度に抑えられる。
  • 外部反射ミラーにはHDDのプラッタを使う事が出来る。
  • CO2を化学的な手段で発生させると必ず水がコンタミする。小型のボンベを使うほうが良い。
    (水分の混入については良いと言う意見もあり、集約されていません)
  • アノードはワイヤの簡単なもので良い。カソードはイオンのアタックに備えてしっかりしたものを使うべき。
  • 細い放電管は冷却に有利。ガス圧をあげることが出来、けっか放電電圧も上げられる。
  • ガス圧を高めると分子の平均自由行程が短くなるので加速の程度も下がり、結果的にカソードのダメージや温度上昇が少なくなる。
  • アルミ電極はひとつのよい選択。アルミに形成される酸化膜が金属アルミのスパッタを抑止する。
  • MOTから12kVを作った例がある。
  • USP#475600に金がCOとOの再結合触媒として作用するという記載がある。
  • ガス圧に関する記載は、おおよそ20-35torr付近に集中。
  • 流量は様々で、2L/min~0.5L/minの範囲と広い。
まだ半分くらいしか読んでいませんが、大変参考になります。
Sam’s LASER FAQ の他、ネットの様々な情報を見ながらみら太が考えたアイデアを以下にまとめておきます。
  • やはりヘリウムはたくさん要りそう。バルーンタイムを買うべきだろう。
  • フロー制御は難しいが、動作の安定のためにレーザ管のガス圧を自動制御する機構くらいは作る必要があるだろう。
  • 真空に近いガス圧のセンサは非常に高価。ゲージ圧を測定する半導体式センサは数千円でパーツが手に入るが精度が低すぎる。
  • そこで、差圧式のセンサを使うと良いのではないか。測定時には真空バッファとレーザ管の差圧を測定する。差圧であればアナログ式でかなりの精度(0.1torr)が出せると思われる。
    たとえば、FreeScaleMPX5010DP なんかよさそう。
  • シリカゲルはCO2を吸着するので水分除去には使えない。過塩素酸マグネシウムを使うべき。
  • 凹面鏡は化粧用の拡大鏡として手に入れることが出来る。これを全反射ミラーのベース材として使うことが出来る。(すでに購入しました。
  • 集光レンズの変わりに凹面鏡を使うことも可能。曲率の大きな凹面鏡はボンベの底を鏡面になるまで磨けば手に入る。
  • 出力側のミラーにはHDDプラッタに穴を開けて銅(金)をスパッタしたものを使う。
  • 金のスパッタには食用金箔を銅ターゲット上に貼り付けたものを金ターゲットとして使う。
といった感じです。
詳しくはやってみないとわからないものばかりですが、少なくとも先人の経験を知っておくことは意味があります。

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