夏季休暇を利用してものすごいジャンクをちょっとだけばらして内部確認をしてみました。期待通りのすばらしさであります。
モノはキーエンスの3次元レーザマーカーML-Z9500です。30Wの空冷CO2レーザを積み、さまざまな材料表面にシリアル番号などをマーキングするマシンです。
システムは大きくヘッドとコントローラに分かれております。
まずはヘッドから。ここにCO2レーザ管とガルバノミラーが入っているはずです。
横倒して下を見たところ。
随分とコーティングがはがれておりますが、ここが出力窓です。ZnSe特有の黄色です。これはもう使えないだろうと考えています。この出力窓は取説上出力”レンズ”と書いてありますが、ここがレンズになっているかどうかは非常に重要です。レンズ、つまり何らかの光学的なパワーを持っている場合、外してしまうとフォーカスしなくなりますので他の部分が正常に動作してもマーキング動作を行うことができません。代わりのレンズを捜そうとしても非常に高価な上に、レンズ仕様がわからないという問題があります。特にスキャン光学系のレンズはfθレンズやテレセントリックレンズなど一般的な凸レンズとは異なる形状のものが使われますのでほぼお手上げです。
とにかく中がどうなっているのかを確認してみます。
まずメンテナンスでも外して掃除することが推奨されているフィルタ部分から。
スポンジを外すと大きなファンが3個現れます。その向こうには空冷CO2レーザのフィンが見えます。あちこち錆びていて年代を感じさせます。
反対側の外装に移ります。ここからは通常メンテで開けるところではありません。ネジ類も六角が使ってあるなど簡単には手が出せないようになっています。
分解の基本は「見えているネジを全部外す」です。こんなシールがありますが、気にしません(笑
ちゃんと不可逆開封シールになってます。さすがキーエンス。
外装外しました。上部にはFPGAが乗った基板となにやら4系統分の電源フィルタっぽい基板が見えます。
横。このしたのぶぶんが空冷のCO2レーザと思われます。非常にコンパクトです。これで光学出力30Wということです。全長を短くするために中で光路がコの字に折り曲げられている可能性がありますね。
ヘッドのヘッド部分を外します。ここはプラスチックの外装になっています。
外すと予想通りガルバノミラーユニットらしきものが直交配置されています。
ここには「821-B-M40-03」の表示が見えますがネットに情報はありません。Galvano mirror、 Galvo といったキーワードと組み合わせてもeBayの情報しか引っかかってきません。eBayのものは「キーエンスのCO2レーザマーカから外したよ」と書いてあるので何の情報も増えません。
ここには「821-B-M42-02」の表示があります。位置からしてZ軸のフォーカス面高さを決めるためのものと思われます。
仕様上曲面にもフォーカスできるとなっていますので、スキャンに同期してリアルタイムでフォーカス位置を変えられるようになっている可能性があります。
「LED」「シャッター」といった表記が見えます。
ここがシャッターと思われる部分。CO2レーザ管の射出口直後、Z軸フォーカスおよびガルバノミラーシステムと思われる光学系の手前にあります。奥に見えているモータを駆動して物理的に遮蔽板を光路に挿し込むものと考えられます。
レーザ管の射出口表示。
基板に戻って制御系を見てみます。
結構ぎちぎちの配線になってます。大丈夫なんでしょうかね。
外部コネクタは二つ。制御系のDSubとレーザ電源の3極キャノンっぽいプラグ。
ここにきている電源がレーザ管用の高圧なのか、高圧電源はこのケースの下部にあって、このプラグは低電圧が来ているのか不明です。
まともな設計なら高電圧を引き廻すとは思えませんので、ここは低圧のはずです。端子間距離も近いですしね。この距離で15kVとか掛けたらコネクタ挿してても容易に絶縁破壊すると思われます。
コントローラ側。
裏から見たとこ。3極のうち一つはGNDであとの二本が電源です。
電気回りを追いかけるのは次回としましょう。もう少し腰を落ち着けて作業する必要があります。
いよいよ出力レンズを外します。
ねじ四本で簡単に外れます。ちょっと見たくらいではレンズなのか板なのか分かりません。焦点距離が数10cmありますのでホルダに入った状態を目で見ても曲面なのかどうかわからない可能性が高いです。
中をのぞきこんでみます。予想通りガルバノミラーシステムが入っているようです。
こちら。直交するミラー。教科書通りのシステムですね。右上にはZ軸焦点調整用のレンズ系の出力と思われる窓があります。ここも当然10.6um対応ですからすべてZnSeで作られています。ここだけでも相当なお宝が回収できそうです。
ガルバノミラーシステムの横にはなにやらもう一つ窓が。取説によると焦点確認のためのレーザ射出口とのこと。
ということは、この製品はCO2レーザと可視光レーザは同軸ではないということですね。
これは残念なところです。10.6umと可視光(多分650nmの赤)を同軸にする部分は前から見てみたかったのですがこのモデルでは無理のようです。上の方の写真にあるシャッター部分にその光学系が作り込まれているんじゃないかという期待をしていたのですが、CO2の軸と全く違う位置にあるこの窓から可視光が出るのであればそれも違うはずです。
しかしながら、普通はまず目にすることもないような精密光学系を見ることができて満足です。おそらくこの部分は無傷と思いますのでいろいろ遊べると思われます。
ヘッドの方を一通り見ましたので、コントローラに移ります。
こちらは一見タワー型のPCといった外見。
表側。ねじやポートはことごとく錆びています。交換して動作確認をする必要がありますね。
開け方もPCっぽい。
こちらもFPGAが乗っていて何やってるのかさっぱりわからんです。
興味があるのは制御系より電源系です。特にレーザ管の電源系。
シールドが厳重でよくわかりません。
こちらはコントローラ全体の電源。
やたらとバックアップ電池らしきものが目立ちます。
レーザ管の電源をもう少し詳しく見たいと思って反対側のカバーを外してみたところ。
ここでやる気をなくしました(笑
こんだけ触らせたくないということは高電圧系が入っている可能性もありますね。
でもヘッドに行っている線はこれです。とてもkVを扱えるようなケーブルではありません。ということで、詳細不明なままとなりました。
横浜基地に持っていくと話が早いんですが、このサイズを置いておく場所がありません。
ということで、もうしばらくはこのままです。
が、中はお宝の山であることは確認できました。次回の分解は年末かもしれませんが、のんびりとやっていきたいと思います。
それにしても良いジャンク。
コメント
これはたいへん素晴らしいジャンク。
特に光学系が・・・あぁ、羨ましく思えます。
ウェイさんどうもです
光学系はすばらしいんですが、これを果たしてうまく活用できるかどうかですね。わたしは一体なに作るんだろう