水蒸気除去カラムに続く二つ目のガス調製器は窒素の精製カラムです。
窒素は大気の8割ほどを占めておりますので、ここから取り出すのが得策です。大気の残り2割はほとんど酸素、そして少しの二酸化炭素や希ガス類です。二酸化炭素はいずれ混合しますので少々入っていても問題ありません。また希ガスは無視しても良いでしょう。ということで、酸素が主な除去ターゲットとなります。
簡単なのは密閉容器の中で何かを燃やすことです。そうすれば酸素はなくなってしまいます。ただこの場合は代わりに二酸化炭素が発生します。もちろん二酸化炭素は最初から大気に含まれていますし、レーザ媒体として使うわけなので混ざっていても良いとも言えますが、実験時に窒素と二酸化炭素の比を変更できるようにしたいので、出来るだけ純窒素を得たいところです。大気中の二酸化炭素が0.04%程度であるのに対して、酸素は20%もありますから、燃焼させてしまうと無視できない量の二酸化炭素が混ざることになります。
ということで、別の方法を考えます。それは使い捨てカイロを使うことです。
使い捨てカイロは鉄が酸化する際のエンタルピー変化で熱を放出しています。使う前は脱酸素状態で密閉されており、封を切ることによって不織布を通じて酸素と鉄が反応し発熱が始まります。
この原理を利用するのです。
ということで、ここで作った容器にホカロンの中身を入れます。
カラムを作るとビンの中にある酸素で発熱が始まります。
使い捨てカイロには鉄のほかにも反応促進助剤として炭や食塩、そして水が入っています。下の写真のように加熱によってビンの内側が曇っています。
ということは、このカラムを通したガスも脱水蒸気しないといけないですね。
- ろうそくの火に大気を吸い込んだシリンジの中身を吹き付けて火が消えないことを確認する。
→大気には酸素が含まれているので、炎は揺らめくが消えることは無い。 - 次に、カラムを通して大気をシリンジの中に吸い込み、それを同じ程度の強さでろうそくの火に吹きかける。→容易に消えてしまう→カラムを通すことによってかなりの酸素が除去されている。
問題は「酸素がどの程度減っているかわからない」「二酸化炭素の量もわからない」という点です。
まず、酸素の減少はカラム充填材であるホカロンの中身とそこに通す大気との相互作用の程度によって決まります。ゆっくりと時間をかけて触れ合わせて十分に反応させる必要があります。また、カラムに割れ目などが出来て未反応のままガスが抜けてくることが無いようにしないといけません。
いずれにしろ、酸素の量を測定する手段を持ち合わせておりませんので、上記に気をつけて酸素がほぼ完全に除去されていることを祈るのみです。
次に二酸化炭素の量です。これは原理から考えて酸素が二酸化炭素に置き換わることはありませんので、予め大気に含まれている量より増えることは無いはずです。カイロの中身には炭として大量の炭素が入っていますが、これは鉄と酸素の反応助剤(触媒)であって自身が参加されることは無いと考えています。
二酸化炭素が含まれているかどうかは、カラムを抜けたガスを石灰水に通せばわかるはず(懐かしい実験です)ですが、石灰水が手元にありません。乾燥剤として売られている塩化カルシウムを水に溶かして電気分解して水酸化カルシウム水溶液を作るという手もありますが面倒です。
ということで、このカラムに関してはどの程度の効果があるのかを定量的に調べることが出来ませんが、上の動画のようにそれなりに酸素はなくなっているようですので、出てくるガスを純窒素とみなして実験を進めることにします。
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