ここまでの自作レーザ加工機五号機についての投稿はほとんどハードウェアの話でしたのでソフトウェアについてもまとめておきます。
結論は「LightBurnがすごいので(有料だけど)おすすめだ」というものですが、そこに至った経緯もそれなりにご参考になるかもと思いますので書いておくかと。
レーザ加工機四号機までは一貫してMACH3を使ってきました。五号機ではMACH3とパラレルポートの呪縛から逃れるべく調査を行い、LaserWEB4を見つけて一旦これに落ち着きました。
ちなみに実際の加工機の制御構造というのは結構複雑で、このあたりやこのあたりにだらだらと書いていますが、ここまでの経緯でハードウェア寄りのソフトウェア、というかコントローラのファームウェアはほぼgrbl-LPCに決まっております。この投稿でまとめるのは、その上位ソフト、PCで動くGコード生成およびその前の部分についてです。
現時点での入手先や本拠地はそれぞれこちら。
これらの関係を荒っぽく書くならば、LaseWeb4 + LaserGRBL << LightBurn という感じです。これは何を表したいのかというと、LaserWeb4のベクターカットとLaseGRBLのラスター描画を合わせた機能よりLightBurn(のベクター/ラスター)の方が超すごい、ということです。
レーザ加工機で出来る加工処理というのは大雑把に言うとカッティングを行うベクター制御とマーキングやEngravingを行うラスター制御の2種類で、ベクター制御はIllustlatorのようにデータを線の集まりとして加工し、ラスター制御はPhotoShopのようにデータを点の集まりとして加工していきます。
派生としてこれらを組み合わせたベクター図形のラスターFill処理やFill処理後に輪郭をカットするような制御、といったものもありますが、ヘッドの動きや扱うデータで考えると結局二種類です。
LaserWeb4とLightBurnはベクター/ラスター両方の加工に対応し、LaserGRBLはラスター加工に特化されたソフトです。
まず同じベクターデータを使ってLaserWeb4とLightBurnを比較してみます。データはInkscapeでjpg画像から輪郭抽出を行ったV4ミクさんのsvgデータを使います。LaserWeb4もLightBurnもdxf、ncなどの複数のベクターデータに対応しているという点ではほとんど差はありません。
Inkscapeで処理する元絵(png=ラスターデータ)はこちら。公式からのDLです。相変わらずかわいらしくていらっしゃる。
Inkscapeについてはこの投稿の趣旨を外れますので解説しませんが、フリーソフトでありながらほぼIllustlatorというすごいソフトです。これを使ってミクさんを明るさごとの4段階に輪郭抽出します。
これだけ見てもわかりませんが、このミクさんはすでに線(ベクターデータ)と、線で囲まれた面の塗りつぶしで出来ています。
例えばこの画像で塗りつぶし面(フィル)を消すと、
こういった輪郭(ストローク)だけにすることができます。
このストローク図形はこのように細かな線(パス)の集まりで出来ています。
このデータをsvgとして保存します。
まずLaserWeb4で読み込んでみます。
次にLightBurn。
両者ともに似たような感じで読み込めていますが、実はLaserWeb4ではこの読み込みに4分くらいかかっています。LightBurnでは瞬間です。まずここに大きな差があります。
次にデータ出力処理です。こちらはLightBurnから。
出力したいデータを選択し、速度やレーザパワーなどの条件を設定して開始ボタンを押すだけです。直ちに描画が開始されます。
次にLaserWeb4。出力したいデータを選択して条件設定をするところは同じです。
で、この後すぐに出力はできず、まずGコード化処理を行うことが必要です。
これがまたけっこうな時間がかかります。このミクさん一人で3分くらいかな。プログレスバーはあるのですが、ほとんど止まったままになるので不安もひとしおです。実際フリーズしている場合もあって、2時間以上待って諦めたこともありました。一方で40分くらい処理が続いてもう諦めようとマウスを握った瞬間に処理が終わったりしたこともありました。
処理が終わってGコード作った状態。パスが色違いで表示されます。
で、制御モードに移行して、ようやく出力ということになります。
「Gコード作るのは数分だし、所詮趣味の世界でしょ」とも言えますが、データにちょっとしたミスが見つかったり、速度などの加工条件が合わなかったりしたときにはデータの読み込み直し、Gコードの作り直しが都度発生しますので、これらの時間がボディブローのように効いてくるのです。そして、データのサイズや複雑さが少し上がると急に処理時間が長くなっていくのです。
LaserWeb4のほかの機能についてはここでは細々説明しませんが、実に優れたソフトであることは間違いないです。が、致命的に動作速度が遅いというのが私の評価です。
ちなみに、私が使っているPCはXeon Es-1620 3.7GHz、実装メモリ16GB、 GeForce GTX1060、SSD512GBというひと昔前ながらそれなりのパワーを持っているマシンです。セカンドマシンの2in1(Core i5/8GB)では当然ながらこれらの処理はさらにさらに時間がかかります。
何よりもですね、LaserWeb4でこれだけ時間がかかる処理がLightBurnではほぼゼロというのがここで強調したいことです。おそらく基本の設計の時点で考え方が違うためだと思いますが、ここまでの差は驚くべきことだと思います。
もちろん、簡単な図形、いわゆる「レーザ加工機でカットしました」みたいな図形であれば両者の違いはほぼありません。が、データが複雑化すると共に急にその違いが目立つようになるのです。
次にラスターデータです。
結論から言うと、私はLaserWeb4で満足のいくラスター加工条件を見出すことはできませんでした。読み込み/Gコード化の速度的には大きな問題はないのですが、どのように条件をいじってもきれいな出力が得られなかったのです。きれいな、というのは階調が出ないとかといったことではなく、そもそもの絵がボケているのです。ラスター描画時にはヘッドが往復しながらレーザ照射していきますが、往路と復路で位置がずれるし、そもそものGコードの送り出しが遅れているとしか思えないと感じられる場合も多々ありました。
決してLaserWeb4を悪く言うわけではありませんよ。私の環境と条件設定ではどうしてもうまく行かなかったということです。
「それはお前の加工機の問題やろ。バックラッシュとか残ってんじゃね?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。私も同じことを疑って、ベルトのテンション上げたり、grbl-LPCのバージョン換えたりgrblの設定いじったり、最後はArduino/grblにコントローラ変えてみたりまでしましたが結果は変わりませんでした。
何よりもLaserWeb4に課題があると結論したのは、ラスター描画にかかわるこれらの問題がLaserWeb4の代わりにLaserGRBLつかったら全部解消したということからでした。
LaserGRBLについてはマーティの工房日誌に素晴らしいまとめがありますのでここでは言及しません。とにかく、LaserWeb4ではさんざん条件をいじっても全く改善しなかったラスター描画がLaserGRBLを使うとデフォルトのままで一発OKだったというのが私が得た結論でした。
さて、本来であればここでLaserWeb4とLaserGRBLで出力したラスターのサンプルを比較画像で出すべきところですが、そこまで突っ込んだ実験をやることはありませんでした。なぜなら、ラスター描画で散々苦しんでいた時に出会ったLightBurnがあまりに素晴らしすぎたからです。
これが上の方に書いた LaseWeb4 + LaserGRBL << LightBurn に込めた私の気持ちです。LightBurnに出会って以降LaserWeb4を起動することはほぼ無くなりました。
ということで、今後のみら太な日々のレーザ加工システムは LightBurn + grbl-LPC on Smoothieboard で動かしていきます。
以下アフィリエイト内にも関わらず自主的に営業というか布教(笑
LightBurnは30日間の試用期間が設けられています。試用期間中の機能制限は一切ありません。
LightBurnは30日間の試用期間が設けられています。試用期間中の機能制限は一切ありません。
様々なラスター/ベクターデータの読み込み/編集に対応するほか、LightBurn自体でも図形描画、ラスター絵の輪郭抽出などが可能で、おおよそレーザ加工でやりそうなことはこのソフト一本で出来るようになっています。こんなすごいソフトがわずか$40です。
私は試用を始めた直後にLightBurnがそれまで抱えていた問題をすべて、しかも高度に解決することを見つけ、直ちにレジストしました。支払いをするとすぐにメールでレジストキーが送られてきます。
ちなみに、AliexpressでもLightBurnが販売されていますが、なぜかこちらの方が高価です。本家で購入ください。
ということで、制御システム的にもレーザ加工機五号機が完成したと言えるでしょう。
ここから先いくつかの投稿では、完成した自作レーザ加工機五号機システムでどんなことができるのかを紹介していきたいと思います。お楽しみに。
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